第422話・『嫉妬図星』

だらりと下がった腕、ファルシオンを引きずる様は幽鬼のようだ、虚空を見詰める瞳は頼り無く知性を感じない。


先程まで確かにキョウだった、今もキョウだ、だけど何かのタガが外れたように『おかしく』なった、そして進行している。


こちらが女のキョウ、メスのキョウを殺そうとしていたようにあっちもこちらを殺そうとしていた、封印されたと言っていたがやはり出て来た。


しかもキョウの精神を汚染して手駒にしている、きっと多くの一部が反発しているだろうがキョウである彼女には逆らえない?誰か協力している?


舌打ちをして目の前の状況と向き合う…………攻撃は大雑把で視線を追えば回避は出来る、しかし命がけ、キョウの身体能力はドラゴンの血を持つ自分より遥かに高い。


キョウには自分の血も既に混ざっている、取り込まれた時に。


「酷いのだ、キョウだけ強くなって」


「?おまえ、キョウがいらないってずっと言うんだ、ずっと、反響して、あたまいたい」


「だ、大丈夫なのか?!」


「うー」


カチカチ奥歯を鳴らしながらファルシオンを振るう、避ける際に風圧でバランスを崩して転げ回る羽目になる、キョウはゆったりとした動作で追撃する。


自分自身でも今の状況を把握出来ていない?殺せと命令されてその通りに動いているだけでそこに何の葛藤も疑問も無い、操り人形、キョウが操られる?


自分を教育して洗脳して支配して加工したキョウが。


あんな女なんかにっ。


「キョウを返せ」


「あ、おれ、わたし、私のだもん、返すわけ無いでしょうに、お前が死ねば丸く収まるんだよォ」


「そんなわけ無いのだ、キョウが悲しむだろう、好かれている自信はあるぞ」


「五月蠅いよ、おれは」


「そう、前者では無く後者、そっちの意見が聞きたいのだ」


合間にキョウが見える……メスのキョウに支配されながらも自我を持って行動している、それがまだ救いだ、人質になろうとそこにキョウがいる。


キョウがいる事で自分は強くなれる、学んで成長したように、そして現状を打破するために攻撃を避けながら呼び掛ける、切り替わりのスイッチを探す。


「んふふふ、おれは、きょうをまもる」


混ざりあっている、だけどそれは完璧では無い、完全では無い、その点で考えるなら自分と同じだ、キョウに他者を望んでいる。


メスのキョウはキョウと分かれたい?


そしてキョウを愛したい?


それが叶う自分をだから憎む?


だから消そうとする?


「ああ、お前、嫉妬しているのか」


「ハァ?!」


図星だろ。

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