第421話・『殺さなきゃ自分が殺されてコロコロ』

目の前に敵がいる………俺から私を奪う奴は敵だ、私はずっと昔から俺を護ってくれた、愛してくれた、親友でも無く恋人でも無く弟でも無い。


俺を護るのは俺だけだ、だから私を護るのも俺だけなのだ、目の前にいるこいつは誰だっけ、誰でも良い、殺して焚き火で焼き肉にして食う、焼いた肉大好き。


ファルシオンが空を切り裂く、一瞬で回避しやがった、こいつ…………普通の人間じゃ無い、でも大丈夫だぞ、キョウは俺が護る、私は俺が護る、お前が俺を護るように。


初撃を躱されて少し狼狽える、どうして避けるんだろう、こいつはキョウを傷付ける敵だから殺さないと、そう、他人だ、一部でも何でも無い俺にとってどうでも良い存在。


「キョウっ、いきなり殺しに来るとはっ、どうしたのだ」


「お前はキョウの敵なので殺す」


「キョウ?」


「お前はキョウの敵なので殺すって言ってんだよ、誰だテメェ、キョウを泣かせる奴はみんな死ね」


クロワッサン状の尻尾をした謎の生き物、見た目は可愛いけどロリ過ぎる、そう、年上好きの俺からしたらどうでも良い存在、だからちゃんと殺せるぜ。


キョウを泣かせる奴は殺さないと駄目なんだぜ、ファルシオンを構え直す、肩に預けるような形で全力で振り落とす、避けられても地面の跳ね返りを利用して股を引き裂けば良い。


柔らかそうな体をしているから余裕だろう、お前を引き裂くときっとキョウは笑ってくれる、クスクスクスと天使のような笑みで笑ってくれる、だから俺はお前を殺すのだ、躊躇無く殺す。


「死ね、爬虫類」


「混ざってるのか、あいつと!」


「キョウは俺だもん、私だもん」


飛び掛かる、頭蓋骨を粉々にしてやる、振り落としたファルシオンが轟音を鳴らしながら敵に迫る、カタカタ、柄が震えるのは何故だろう、ファルシオンが止めろと言っているような気がする。


だぁいじょうぶ、お前の大好きな人外であるこいつの血を飲めばお前も納得してくれるさ、なあ、そうだろう、ファルシオン、お前も主である俺と同じで卑しく下品なんだ、血を飲めばその本性が容易く浮き出る。


「ちっ」


尾で地面を叩いて即座に回避する、何だそれ、便利だな、便利そうだから切り落として俺が貰う、絶対に貰う、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい。


ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい。


ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい、ほしい。


え、欲しいって事は俺がこいつを求めてるって事で、好きって事で、え、え、なにしてる、おれ。


『私を護ってくれるんでしょう?くふふ』


「そうだ、キョウを護る為に大好きなお前をころす?」


「矛盾してるのだ、キョウ、騙されるなっ」


爬虫類が吠える、ファルシオンがカタカタ震える、俺は呆然と立ち尽くす。


そしてキョウが囁く。


『殺せ』


「あ」


抵抗は出来無い。


キョウは俺だから。

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