第419話・『キョウを護るのはキョウですからね』
俺もバカでは無いので死を願う視線には気付く、あー、しかしショック、マジでショック、後でササに相談しようかな。
まさか俺を殺そうとする一部が出現するとはっ、みんな俺の事が大好きでみんな俺の事を愛してる壊れた一部であるはずなのに。
この化け物の死を願うって事は正常って事だよなァ、土岐国栖めっ、俺の一部なのに俺の死を願うとは何事だ、けしからん、けしからんぞ。
んふふ、殺しちゃえば良いんだよォ、んふふ、やっと干渉出来た、あ、そう、ころすのは、だめ。
殺せば良いんだよ。
キョウに私がいる。
何時も。
「ん、ぁ」
「キョウ、焚き火の前でウトウトするのは危ないのだ」
「あれ、ね、寝てたか?」
「それはもう存分に……歯ぎしりしてたのだ」
「まあ、美少女って事で勘弁してくれ」
「だ、誰に断りを入れてるのだ?」
「理(ことわり)にだ!」
「わけがわからないけどカッコいいのだ」
「俺を殺そうとしたら殺すぞ」
「キョウ?」
「んふふ」
縦長の瞳孔は竜種の証だ、ゆっくりと細められるそれを見て笑う、桿体細胞の発達した生物の特徴であるソレは夜行性の動物である証、縦に長いスリット状の瞳孔を見詰めながらふふんと笑う、殺したいのか、殺されたいのか。
縦長のスリット状の瞳孔の有利的な面は幾つかある、日差しが明るい時間帯と暗い時で大きさを一瞬かつ自由に変える事が可能な点だ、光の量をほぼ無くすまで細くする事が出来る……故に日差しが強い時間帯でも感受性の高い網膜を護る事が可能だ。
また草原や岩肌の多いような入り組んだ土地で生活するには縦に細長いスリット状の瞳孔が有利と言われている、瞳の色は御空色(みそらいろ)で焚き火を映し出している様は美しい、入り混じる色合いが素晴らしい。
「殺すわけが無いと何度も言っているのだ」
「そう、か、何だか気になるんだから仕方無いじゃないか」
「キョウ、今、少しおかしかったのだ、キョウじゃないような」
「んふふ、そぉか」
「ああ、そうなのだ」
「気のせいだろう、俺の言葉が信用出来無いのか?」
「そう、だな、信用は出来無いかな……期待はしてるのだ」
「んふ、何を?」
「……完全にソレになるのをなのだ」
完全にキョウになったらどうするんだ。
俺のキョウを殺すのか?
だったらお前を殺す。
キョウは。
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