第420話・『お告げだよ、ころせ』

『キョウ』


干渉では無く同化だろうと思う、自分とキョウの切り替えのスイッチがバカになっている、その声はどっちの声、俺かキョウか、どっちの声?あれ、封印してたはずなのに、湖畔の街の地下にっ。


暗闇の中で名前を呼ばれて振り向く、視界が戻る、『太陽』の光に照らされる、振り向くとそこには一人の少女が佇んでいる、まだ子供と言っても良い年齢なのに妙な色気がある、その服装に見覚えがある、胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、グロリアと同じ修道服。


『キョウ♪』


ベールの下から見える金糸と銀糸に塗れた美しい髪、太陽の光を鮮やかに反射する二重色、黄金と白銀が夜空の星のように煌めいている、見る者を魅了するような美しい髪も俺には何故か当然の事として受け入れられる、どうしてだ?


瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、グロリアと同じ瞳だと思うと急に愛しさが込み上げる、わかりやすい自分自身に呆れる。


全体的に線が細くて儚げな少女、シスターである事は疑いようが無いがシスターの枠に収まるような個性でも無い、俺自身、彼女の姿を誰よりも良く知っている。


おれでわたし。


『んふふやっと干渉出来た、同化出来た』


『う、あ』


『不安で仕方無いんだよねェ、爬虫類が自分を殺そうとしてないか不安で仕方無い』


『キョウ』


『そうだよね、信用出来無いから完全に一部にして自分にするのに半端に一部にしたらそんな『不安』が付き纏うのは当たり前』


『お、おれ、でも、他人が欲しい』


『そうだよね、友達出来無かったもんね』


『う、ん、壊れた』


『魔物使いのあの子は逆に一部にしたのに他人だと強要したから壊れたのに仕方無いねェ、んふふ』


『うん』


『爬虫類は自分?他人?』


『は、半分かな』


『全部自分にはしないのォ?』


声は何処までも優しいのでついつい甘えてしまう、ついつい本音を言ってしまう、何時もの様に。


昔のように。


『し、しない、あいつは他人がいい』


『でも他人は信用出来無いよ』


『い、今のあいつが良いんだもん』


『だったらさ』


『?』


『今のあいつがもっとおかしくなる前に殺しちゃえ、殺しちゃえキョウ』


『ころす』


『そうしたら他人のままずっとキョウのものだよ』


ころすとそうなんだ。


かんたんなんだ。

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