第416話・『鈍足豚足豚族』

少しだけ攻撃的になった土岐国栖だがそれ以上の攻撃性の増加は見られない。


何だかおかしいな、あんなにイライラしていたのにさ、それともイライラの原因がわかった?


二人で次の街を目指しながら他愛無い会話を楽しむ、涼しい風と晴れやかな空、それ以上に望むモノも無いだろう。


どうして最近は襲って来ないのか、聞こうとしてあわてて止める、それでは俺から求めているようで品が無い、まるで俺が欲しているようだ。


違うぞ、お前が求めるのが俺であって俺が求めるのがお前では無い、そこん所を勘違いし無いで欲しいぜ、心の中で吐き捨てる、どうも最近おかしいぜ。


だけど餌は持って来てくれるし良しとしよう、エルフを探す嗅覚も成長中、俺の望む様に進化しているようで何処か違和感もある、うーん、聞いて見るか。


あ、トンボ。


「なあなあ」


「どうしたのだ、お腹空いたのか?」


「だ、ダイエット中だぜ」


「まあ、少し太ったかもなのだ」


「嘘だろう?!こんなに可愛いぜ!」


「まあ、元々キョウは痩せすぎだし……それでもまだ」


「うあああああああああ、お前のせいだお前のせいだ、このこの」


「あはは、存分に叩きたまえよ」


頭を叩くと嬉しそうに笑う、ロリめ、生意気ロリめ、こいつって女の子だけど何処か中性っぽい雰囲気があるよな、祟木と同じだ、安心する。


強い男の人は怖いけど憧れる、つよいおとこのひとはあこがれる、強い男の人は怖いけど憧れる、こわい、乱暴されたくはない、でもあこがれるの。


お鬚があって筋肉があって少しすえたにおい、あれ、なにを、そう、おとこのひとはおんなのひとをまもるからすき、ろじうらでもまもってくれる、でもこわい。


きくたはだからいちばんすき、おんなのこだけどおとこのこのようにいさましい、おれをまもってくれるひと。


すき。


「キョウ、叩き過ぎなのだ」


「あ、悪い」


ポンポン叩いていたらついつい楽しくなってしまった、少し調子が悪いのかなァ、餌を食べ過ぎるようになってから『自己』が曖昧になる事が多い気がするぜ。


少し早歩きになると慌てて土岐国栖も足を速める、っても歩幅ってものがあるからなァ、しかしその必死な光景が何とも言えず滑稽でついつい悪戯心が芽生える。


もっと早く歩いてやる。


「ま、待つのだ」


「短足な自分を呪え」


「豚足では無いのだ」


「そこまで酷くは言ってねぇぜ?!」


しかしこいつが何を抱えていようが何を企んでいようが受け止めるのが俺の役割だ。


そう、何を企んでいようと。

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