第412話・『本音地獄』

ズキズキズキ、ドキドキドキ、疼きも脈打つ胸も全てがキョウに直結する。


だけど話を聞いて少しだけ安心した、キョウの一部はキョウであって他人では無い、結ばれる事は無い。


自分だけが特別?一部でありながらキョウを他人として認識している、恋愛対象であるのは勿論の事、いや、キョウしかいない。


昨日会った一部とやらはキョウを崇拝する錬金術師だとか、本来なら一部は他の一部とも精神や知識を共有しているらしいが自分にはそれも無い。


何となく自分以外に同じような存在がいるなと思うだけで何も共有していない、それが特別なのか出来損ないなのかは意見が分かれる所だ……どちらにせよなのだ。


キョウにこうやって甘い気持ちを持てるのは自分が特別で出来損ないだからだ……そう考えると少しは気持ちが軽くなる、そして胸の疼きは激しくなる、恋愛する事を許されている?


しかしあんな美少女と自分はつり合うのだろうかと悶々と考える……キョウは何も思って無いだろうな、そう、人の心の機微に鈍感過ぎるのだ、あまりに鈍感過ぎて苛立って夜はついつい激しくなってしまう。


「だから土岐国栖は悪く無いのだ」


「……エルフは美味しかった、ありがと」


「深夜でも宿に連れ込むのはドキドキだったのだ、そこはまあ、餌やり係だから上手にやりましたのだ」


鼻をピクピクさせてふふんと笑う、横になっているキョウを見詰めながら指を立てて説明する、小分けにして持ち込むアイデアは我ながら素晴らしかったのだ。


耳尖りをプレゼントしたから期待したのに早々にベッドに潜ってしまった、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ。


キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ。


キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ。


「キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ」


「こわっ?!」


「あ、口にしてたのだ、うっかりなのだ」


「ひぃ?!」


壁際に逃げるキョウ、あまり速度に感心する、大きく目を見開いて小刻みに震えている、左右の違う色合いの瞳が潤んでいる、涙目、ん、何か怖い事があったのだろうか?


さっきまで耳尖りを食べてご満悦だったのにどうしたのだろうか。


「キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ」


「ひぃいいいいいいいいいいいいい、グロリアぁあああああああああああああ」


「んあ、また心の中で思ってことを口にしてしまったのだ、反省」


「ぐ、ぐろりあ」


「?」


「つ、つか、お前何時もそんな事を心の中で呟いてるのか?」


「?」


「ほ、本音を」


「キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ、キョウ」


「ひゃあああ」


「本音って言ったから……」


だから逃げないで欲しいのだ。

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