第410話・『くしゃみ遊戯』

白くて柔らかくて良い匂いがして綺麗。


それがキョウの印象だ、全身がガラス細工のようで触れたら割れてしまいそう……そして割れた破片で自分も他者も傷付ける。


その破片にどのような顔が浮かぶのか、そんな抽象的で怪しくてきわどい生き物、そんな存在の餌やり係になった、とても喜ばしい事だ。


肌を重ねるとあんなにも気持ちが良い、あんなにも、何時までも感じていたい、だからこそ夢中になった、営みはメスを変える、、変化させる。


望めば望むだけくれた、白くて柔らかくて良い匂いがして綺麗なものをくれた、そこに惜しみは無く、そこには慈しみしか無い、この人の一部?


それはそうなのだろうけど、何だか違う様な気がする……自分にはこれ程の美貌は無い、それなのに同じと言われて納得出来るか?納得出来るわけが無い。


『ん』


『あ』


『あああああああああああああああ』


『へぷち』


声は幾つも重なる、感じていると艶やかで、毛布の外に出れば可愛らしくくしゃみをする、その時の光景を思い出してついつい笑ってしまう。


ん、ああ、自分は眠っているのか、あの光景が幾つも暗闇に浮かびだされる、目に焼き付けた光景、キョウはすぐに体を差し出す、不安になる、自分以外にも?


何とも言えない感情、これだけの美貌と魔性の魅力、自分だけであるはずが無い、それは傲慢だともう一人の自分が呟く、冷静で知的な自分、感情を優先するなと訴える。


『上手』


『んん、ん』


『上手上手』


『もっと俺好みになぁれ』


『俺好みのテクニック♪』


『へぷち』


しかしどうしても全てを自分のものにしたい、それはあのもう一人のキョウと同じでは?あの狭い洞窟の中にいたらこんな事は思わなかったのにっ。


しかし動きが激しすぎてキョウが良く毛布の外にっ、風邪を……夢の中でキョウの心配をしても意味が無いのに、何処まで行ってもキョウが中心だ。


『へぷち』


『へぷち』


『しゃ、しゃむい』


『もうらめ、もうらめ、ねりゅ、しゃむい』


『へぷち』


『ぷえええ、は、はなみず』


『良い加減にしろゴルァ!』


ぶん殴られたのだ、思い出した。


ずきずき、頭痛はそれが原因なのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る