第408話・『恋をさせるのは好きだけど恋されるのは嫌い、大嫌い』

眩暈が無くなり気分が晴れやかになる、ササをしまう、しまっちゃおうねェ。


そのまま寝床に戻ると土岐国栖が焚き火の前で尻尾を逆立てて立っていた、あまり見た事の無い表情に狼狽える。


火の色が色白の彼女を照らす、どうしようも無い状況、怒っているのか喜んでいるのか良くわからない表情、メスの表情。


そうだ、こいつもメスだ、メスの表情をするのは当たり前なのだ、それはわかるがどうして今?これから燃え上がるような時間でも無い。


明日に備えて眠るべきだと冷静な自分が心の内で呟く……それとも俺の勘違いだろうか、どかっ、地面に座り込むと合わせて正面に座る。


「何だぜ」


「くんかくんかくんか」


「え、に、臭うか?そりゃ水浴び出来るような場所が」


「メスの匂いがするのだ」


「は?」


「キョウの体からメスの匂いがするのだ、くんかくんか、間違い無いのだ」


俺もメスだけど他のメスってか?ササか?確かにメスだけども……同じ一部に嫉妬しているのか、反応としては珍しく無いがこいつの性格的に何だか不思議な気がするぜ。


お前の為にササと会っていたのにそれが原因で嫉妬されるとはっ、うーん、顔を伏せる、別に悪い事をしたわけでは無い、それなのに責められているような申し訳無い様な気持ちになる。


何だか釈然としない、ぱち、焚き火の音を聞きながら無言の時間を過ごす、寝た方が良く無いか?ぱちぱちぱちぱちっ、火は弾ける、拍手喝采のように……微睡む、寝たい、浮気になるのかコレェ。


「何だよ、何だよっ」


「何だか胸のここん所がズキズキするのだ」


「それは良かったなっ!」


恋心を得たのか?お前である俺に?何だかどんな風に反応して良いかわからずに少しキツイ言葉になってしまう、ソレに対して土岐国栖は首を傾げるだけ、わかっていないのか?


洗脳はした、教育もした、でもお前の初恋を奪うつもりは無いぜ、それなのに勝手に俺に恋しやがって、一部が勝手に何かをするのは嫌いだ、俺が恋させるならまだしも自分から恋をするだなんて。


理不尽では無い、一部は俺のものだから。


「一部を具現化してただけだ、お前のように」


「?」


「お前以外にも一部がいる事は知ってるだろうが、ソレだ、別に変な事はしてねぇぜ」


腸を見たいと思っただけだ。


お前の腸も見たい。


それが好きって事。


「お前のように、ササも可愛いから、腸」


口元を押さえて蹲る、それは駄目だっ、ああ、こいつはササと違って死んだら復活出来無い、完全な一部では無いから。


死んだら■■のように永遠に会えない。


「キョウ、他のメスと土岐国栖を比べている?」


押し倒される、指が伸びる。


やめろ、おれは。

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