第407話・『好きやでぇ、好きやでぇ』

土岐国栖についての意見を聞かれて素直に答える、他の一部達もそこまで嫌っていないように思える。


それは神様が望んでそのようにしたからだ、神様が望めば皆も納得する、確かにあそこまで砕けて会話をしているのを見ると殺意は――。


それ以上にお友達を得ようとして失敗した心の傷を埋める為に『あのような出来損ない』を製造した事への心中を想う、それだけだ。


土岐国栖と暫く旅をして神様も明るくなった、それは悪い事では無いだろう、自分がいてもあそこまで神様を笑顔に出来るだろうか、自問自答する。


「――――嫌いでは無いですよ」


腕の力がゆるむ、殺したいと言っていた、神様は愛情と殺意のコントロールが下手でその要素が混ざりあって独特の表現をされる、独創的で素晴らしい。


両目を抉って頂いた時を連想して微笑む、けほっ、死ぬかと思った、死んでも神様の肉体で再生されるだけの存在、神様の肉体の末端、末端の末端に過ぎない。


ああ、だけど意見を聞く際に自分を選んでくれたのは良かった、麒麟はかなり反発している、消せと、土岐国栖を消せと何度も何度も叫んでいる、あれは危険だ。


一部の分際で神様を独り占めしよう等と、生意気な、下等な獣が、故に具現化もされずにずっと封じられている、しかしあれが最も強力なカードの一枚である事実も認めないと。


「きらいではにゃい」


「そうです、神様が『良い』と感じているものを否定するほどにササは傲慢ではありません」


「……」


「あの一部と一緒にいると楽しいのでしょう?ササはそんな神様を見ているのが―――幸福ですから」


「にゃあ」


神様はそう呟いて何も言わなくなる、思った事をそのままに伝えた、あの一部が神様の心を癒すのであれば自分から言えることなど無い、喜びを持って受け入れる。


「それがササの意見です」


「しょんにゃの」


「神様?」


「しょんにゃのなら、ささといっしょのときもたのしいよ」


「っっ、お、お戯れを」


「?ほんき」


「うぁ」


突然の告白に何も言えない、抱き抱えられたまま顔を伏せる、これは、これは幸せだ。


幸せだけど恥ずかしい。


嬉しい。


「たのしい、すき」


「………こ、光栄です」


「?ささは?」


「す、好きです」


「うん、しってる」


知っていて欲しい。

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