第401話・『キョウは可愛いからキョウは無敵』

キョウが餌の処理に追われている間に体を奪うのは簡単だった、魔物を製造するのはキョウの中でも出来る。


ササの錬金術に高位の魔物たちの力を組み合わせれば簡単、それで爬虫類を殺せたら良いなぁと考えていたが予想以上に丈夫だった。


しかしあまり強力な魔物を製造すればキョウに感づかれる、チャンスは今しか無い、グロリアと合流すればすぐにバレてしまう、あの女は恐ろしい。


キョウが教育して自分専用に製造しつつ加工しつつそれでいて『自由』の権利を与えた稀な存在、友人を作ろうとして失敗した件がまさかこのような結果を生み出すとはっ。


一部でありながらキョウに逆らう事が出来る存在、一部でありながらキョウに他者として振る舞える存在、そんなものを許せるはずが無い、キョウでありながら肉体を得てキョウと結ばれるのは自分。


欲しがっていた場所を下等な一部に奪われた。


そう。


そこ。


そこ。


そこは。


私の。


「あは、命令違反だよォ、んふふ、私もキョウだよ、多重人格では無い、キョウの生理的な現象」


「い、意味がわからないのだ」


「欠伸やくしゃみと同じだけの、それだけの事、だから私はキョウの望みそのもの、皮の無い素直なキョウ」


「その割には嫉妬塗れで気持ち悪いのだ」


死体の山に囲まれて彼女は顔を蒼褪めさせて呟く、失礼な、キョウは他者を信用出来無い可愛そうな子、過去の経験から他者は裏切ると理解している、だから私だけを信頼して信用している。


自分だけを信頼して信用する事の何処が悪いのだろうか?つい最近一部になったこいつに何かを言われるのは……殺したくなる、餌やりだけしとけば良かったのだ、キョウの特別に何かならずに。


ファルシオンはあまりやる気の無い様子で目の前の異端に反応しない、人外を好む魔剣なのにキョウの意図を読み取っている?どいつもこいつも私に従わないよね、そう、どいつもこいつもどいつもこいつも。


素直に従ってくれるのはキョウだけ。


好き。


「それだけ言葉を重ねても無駄なのはわかっているのだ、女の嫉妬は醜いのだ」


「お前の方が醜いよォ、化け物」


「キョウの姿をしているのに醜く見えるお前の方が化け物なのだ」


「可愛いよ、私」


「聞いていたのか?お前は――――――」


「だって私キョウだもん」


「っ」


「キョウは可愛いもん」


そこには何の疑問は無い、反論出来ないだろ。


「可愛く無いお前は死ね」


キョウをこいつから取り戻したいっ。


そう思った。

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