第399話・『んふふふ、はんにんです』
与えられた餌の多さに戸惑う事もある、グロリアに再会するまでのサービスだと受け取っておこう。
ドラゴンの細胞を持っているだけあってその力は圧倒的だ、元々は大人しい虫も殺せぬような『純粋』な性格。
しかし純粋さはそのままに今は俺の為に狂っている、いや、こいつにとっての正常が今なのだ、過去が異常だったのだ、価値観の変化。
純粋なだけに染まりやすかった、かつての俺と同じだ、グロリアとキョウの教育で俺の価値観は変化した、それと何も変わらない、次世代に教育しただけ。
一部としても優秀だし、俺に他者として振る舞うのも気に入った、このタイプの一部を生み出すには教育が大事だなと改めて思う、また生み出したいものだな。
モグモグモグモグ、しかし魔物の裏にいる奴をおびき出すにはどうしたら良いのだろう、餌を食べながら考えるが餌が美味し過ぎて思考が纏まらん、困った、実に困った。
タイミング良く人がいない時に出現する魔物、生み出すとしてもそんなに難しいものでは無い、下位の魔物にしては中々に戦闘力が高い、うーん、考え方を変えて見よう。
「下位の魔物は俺達が他人といる時に現れない」
「確かにそうなのだ」
「初めて出た時は……ドラゴンの、水竜の洞窟、そこから定期的に現れている」
「ほい、追加の餌なのだ」
「まだ生きてるじゃないか」
「おや、虫の息なのだ」
ザシュ。
「つまりは、もぐ、がぶ、お前との出会いから現れるようになったと」
「新鮮な方から食べるとあとあときついゾ?」
「うるせぇ、お前がまた新鮮な餌を持ってくればいいだけだろ」
「それもそうなのだ」
ザシュザシュザシュザシュザシュ。
まだまだ生きてるじゃないか、指摘をすれば殺してくれる、人から餌になる過程は腕を振るうか振るわないかのそれだけだ。
こいつと出会ってから魔物に定期的に襲われるようになったのは事実だ、しかも他者に迷惑をかけないように人前では襲って来ない。
そもそもその考えが違うのだろうか?周りに迷惑を……では無く、俺達に迷惑を…いや、俺に迷惑を?人目を避けているのはその為か?
さらに考えを進めよう、だとすると最初のソレ、こいつと俺が別々に行動していた際に襲われていたのはどっちだ、俺では無い、こいつだ、スーパー餌やり係だ。
じじっ、奇妙な音、覚醒を促すような音に違和感は膨れ上がる、そう、狙われているのは俺では無くこいつで、気を使われているのはこいつでは無く俺。
じじじじじっ。
「狙われているのは俺達では無くお前」
「もっと食べるのだ」
「気を使われているのはお前では無く俺」
「?じゃあ犯人は誰なのだ」
「――――――――――――私だよォ」
廃墟になった村で、キョウの声、が、木霊する。
えさやり、してる場合か、にげ、ろ。
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