第398話・『つーーんってして、おえ』

キョウの食事を冷静に分析する、下等な魔物よりは人間の方を好む、しかし高位の魔物を前にすると人間の時よりも興奮する。


その違いは何だろうと考える………それは知性だ、知性のある生き物を好んで捕食する、つまりはキョウの台詞を借りるなら『ヒトガタ』だ。


成程、耳尖りはその最上に位置するのか、成程成程、それが本来の主食であると考えるなら類似品が食べれる事にも納得出来る、耳尖りに近い程に良い。


あの魔物を食べて吐き出したのは前回の大食いが原因だろうなと思う、あの細身の体の何処にあれだけの人数が……通常の生物では無い、常識は通用しない。


焚き火係として起きている自分と丸まって眠るキョウ、獣の皮を縫い合わせて作ったソレは温かそうだ、穏やかな寝息、見れば見る程に眠り姫だなと思う。


「あの狭い洞窟から連れ出してくれてありがとうなのだ」


「―――――――――――――――――――――」


「ありがとう、命の奪い方を教えてくれて」


「―――――――――――――――――――――」


「ありがとう、愛の伝え方を教えてくれて」


「―――――――――――――――――――――」


「ありがとう、餌やり係にしてくれて」


「―――――――――――――――――――――」


「ありがとう、汚物塗れの顔をハンカチで拭かせてくれて」


「え、それはお前にとって嬉しい事なのか?」


「なんだ、起きていたのだ」


「いや、そんな事より最後のゲロ塗れの話を……」


「ああ、そうか、これが先日キョウの汚物を拭いたハンカチで」


「きたなっ!?捨ててなかったのかよ!?」


ぷーん、うん、中々キツイ匂いなのだ。


「おぇぇえええええええええええええええ、す、捨てろ、捨てなさい、絶対に捨てろ」


「キョウの匂いが一杯で幸せなのだ」


「え、俺の匂いってゲロなの?そこんとこ詳しく教えてくれ」


狼狽えるキョウ、起き上がって割と鬼気迫った顔で問い掛けて来る、獣の嗅覚は敏感だ、このハンカチからキョウの匂いがする事は間違い無い。


「キョウの匂いなのだ」


「どんな匂いだ」


「ツーンとしてオェってなるのだ」


「それはもうゲロの臭いっっっ」


「おろろろろろろろろろ」


「ああ、もう、捨てなさい早くっ」


捨て無いで荷物に隠したのだ。


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