第393話・『うみゃい死体』

血塗れの公園を望んだわけでは無く、空の青さと海の蒼さを否定するように広がる光景。


瞬きをした瞬間に記憶が飛んだ、次に視認出来たのはこの光景、視認したのは死人の光景、口元を押さえて膝を折る。


粘着的なソレが服に染み込むのがわかる、自分で自分を制御出来無いエルフライダーは一部が命令に従うのを信じるしか無い。


しかしこいつは違う、目の前に佇むこいつは一部でありながら一部としての自覚は無い、先程の俺の命令を受け流して自分の思うままに行動した。


俺がエルフライダーの本能で『呆けて』いる間にこのような惨劇をこいつは生み出したのだ、他の一部では絶対に出来無い事っ、してはならないこと、それなのに。


それなのに俺に愛を伝える事を優先して人間を殺した、殺し尽した、目撃者はいないだろう、そこでリアルな思考に陥るのが何処かおかしかった、おかしい、おいしいいいいい。


泥と混ざった血を舐めながら先程まで何を考えていたっけと思考する、こくこくこく、うみゃい、うみゃみゃみゃ、砂利をガリガリと粗食して積まれた死体へと向き合う、餌場だぁ。


そのままゆっくりと歩く、どれもこれもまだ新しい死体、死体、したい、したいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたい。


かぷ、何処かの誰かの腕に噛み付いて首を捻るようにして引き千切る、もぐもぐもぐもぐもぐ、こんなに沢山あるけれど、やっぱり最初の一口目が大事だな、美味しいな、もにゅもにゅもにゅ、弾力があって食い応えがある。


「もぐもぐもぐもぐ」


「ほら、結局食うのだ」


「んぐんぐ」


「背中をナデナデしてあげるのだ」


「けほっ………もぐもぐもぐもぐ」


「夢中なのだ、やっぱり土岐国栖(ときくず)は間違って無いのだ、間違ってるのはキョウの方なのだ」


「?」


「…………かわいい」


褒められたような気がするがそれよりも餌だ、これだけの数、誰かに奪われないだろうか?視線で土岐国栖に見張りをしろと訴える、無言で頷く、だけどこの餌は何処から来たんだろう?


きっと俺が良い子にしてるから……良い子にしてると良い事がある、んふふふふ、くちゃくちゃくちゃ、肉の味は血の味、血の味は俺の好きな味、人の形を俺の歯で加工する、別のものに、餌に。


誰かに奪われる心配は無くなった、このロリは使えるロリだ、使える一部だ、俺に奉仕する為だけに生きるようにそれこそ『加工』した、だけどなにか、なにか、なにか、なにも考えられない、美味しい。


大きい人間も小さい人間もやわらかいにんげんもかたいにんげんもみんなおいしいおいしいい、おいしいのは、しあわせ。


ずっとたべられなかった。


あのろじうらで。


おなかすいた。


あ。


「大丈夫、もう空腹で困る事は無いのだ」


「あぁぁあ」


「良い子良い子、好き嫌いせずに食べられるキョウは偉いなぁ」


「もぐもぐもぐ、たべてりゅから、みてて、もっとほめて」


「ああ、これから先ずっと見てるよ……お腹が空いたら何時でも命令して」


「うん」


「お返事、偉いのだ」


「うふふ」


なんだっけ。

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