第387話・『耳尖りはいいものだぁ』
外の世界は生き物がたーくさん♪キョウに愛情を捧げる為の道具がそこかしらに『落ちて』いて非常に助かるのだ。
だからキョウが落ち込んだ時は自分の出番だ、キョウは自分に色んな事を教えてくれたけど非常に危ういのだ、アンバランスなのだ。
すぐに視点が泳いで口元が震えて虚空を見詰める、そのタイミングはわからないけど放置していたら奇声を発して視界に入る全てを破壊しようとする。
自分を殺せば良いのに殺さない、一部だからと叫んでた、一部ってなんなのだ??しかしキョウの中に一度入ってから妙に清々しい、いらないものが全て消えた?
雨の中、森の中、キョウの中、どれが一番良いだろう、雨も森もキョウも好きだけどやっぱりキョウが一番だ、雨に濡れながら森の中を疾走する、そう、キョウは自分の新たな巣穴でもある。
あの柔らかくて良い匂いのする『洞窟』に戻れるのは至上の喜びだ、あのような良い巣穴があっただなんて知らなかった、それと比較すれば自分が住んでいたドラゴンの巣穴などゴミ当然だ。
早くあそこに戻りたいのだ、でもキョウが泣いている、悲しんでいる、だから殺さないと駄目なのだ、たくさんたくさん殺してキョウに笑顔をプレゼントするのだ、その為の餌を追っている。
若者のパーティー、若者?見た目では判断出来ない、ほら、自分はこのように幼い姿をしているけど割と……人工生物だから仕方無いのだ、キョウとお揃いなのだ、くふふ、嬉しいのだ、喜ぶべき事なのだ。
人間を殺すのは少し手間だがそれだけキョウが喜んでくれる、武装した人間はさらに面倒だがそれだけキョウへの奉仕になる事実に喜びを感じる、竜種の力は容易く人の腕を引き千切り骨をへし折る。
「うわぁ、美味しそう」
「食べていい?」
「じゅるるるるるるるるる」
「美味い」
「ウマい」
「ウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマウマ」
「もっと」
「お腹空いた」
「殺して愛の証明をして」
「殺して食わせて」
「おれ、赤ちゃん」
「赤ちゃんだから何もできない、なにもできない、だから餌をくれ」
「あかちゃんだから―――――――――――――」
「もっともってこいってんだよっっ」
無垢な笑顔と怒声と放心した表情、コロコロと全てが入れ替わる、そうなのだ……この子は普通では無いのだ、普通では無いがそれでも生きようとしている、愛と餌が無ければ生きていけない。
だから殺す、殺したら笑顔になるから、殺さないと笑顔をくれないから、雨の中で思考する、もっとキョウを喜ばせたい、キョウが最も喜ぶ死体って何だろう、それが知りたいのだ。
だから木の根に座り込んで雨宿りをしているそれを殺した。
また違う反応があるかなと。
「耳尖りなのだ」
あるかな?
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