第381話・『一気に俺に染める、えっちはいいもの』

少し寝過ぎたか、転寝にしてはかなり深い眠りだったような気がする、時間を確認しようとしても天井無しのあの場所に行かないと時間もわからん。


微睡を楽しみながら何処かで聞こえる『音』に体を震わせる、耳朶を震わせる素敵な反響音、美しい生き物が美しく無い生き物を狩って俺に献上する。


グロリアには様々な躾を施された、キョウには様々な洗脳をされた、そしてその二つの教育にエルフライダーの能力が良い塩梅で溶けあって今の俺が構成された。


あの子にも同様の教育を施したい、俺よりも無垢で世間知らずで愛情を知らなかったからなァ、どんどんどんどん俺に近くなっている、今もほら、頑張っている。


自分が護るべきドラゴンに手を出そうとした時は流石に叱ったけどなァ、ドラゴンは駄目、ドラゴンは俺の夢だからダメ、絶対にダメ、その時に思いッきり殴った右手がまだ痛い。


理不尽も学べ、俺を喜ばすために学べ、くふふふふふ。


「どうしたのだ?嬉しそうなのだ」


「おう、殴られた方の頬は痛くないか」


「い、痛いのだ、ヒリヒリするのだ」


「当然だぜ、ダメって言ったのに殺そうとしたから……お前の為に俺の右手も赤くなっちゃった、これもお前の為、全部お前の為」


「あ、ありがとうなのだ」


「お互いに相手の為に色々してやれるのって素敵だよな、お前は俺の為に命を奪って俺はお前の為にお前を殴る」


「う、うん」


「お互い愛し合って無いと出来無いぜ」


「そ、そうなのか、キョウは何でも知っているのだ」


「そうだぜ、お前の為に一番大切なお前を殴るって普通は出来ないだろ?でも俺は出来る、お前が大切だから」


「あ、ありがとぉ」


「んふふ」


毒で染めてやる、いや、かなり俺に近付いた、グロリアもキョウも楽しかっただろうなァ、無垢な俺を開発しておかしな生き物に改造するのさ、やってみてわかる、すげぇ楽しいよコレ。


見詰める、美しい生き物が醜い俺になりつつある、楽しい、独特の濃い色合いの緑の髪、髪は虫襖(むしあお)と呼ばれる独特のソレ、玉虫の翅(はね)のようにやや暗い青を含んだ緑色の髪。


別名では夏虫色(なつむしいろ)とも呼ばれて親しまれている、玉虫の翅(はね)は光の受け方で紫色や緑といった様々な光を放つ、古代から織物で玉虫色を表現するのは難しいと言われて高貴なモノとして扱われた、縦糸を緑にして横糸を赤を若干含んだ紫で構成したものが最上として扱われる。


高貴な色、誰も褒めてくれないソレを俺が褒めてやる、全体に優しく柔らかくかけたパーマがまるで水底の水草のようで前髪はかなり切り込んでいて少年のようだ、このショートウルフが野生的な彼女に実に似合っている。


「瞳も綺麗だ、最近はすぐに殺気を含んでて素敵だ」


「?」


「何かを殺そうとするときにお前は可愛いよ」


「え、う」


「もっと見たいな」


縦長の瞳孔は竜種の証だ、桿体細胞の発達した生物の特徴であるソレは夜行性の動物である証、縦に長いスリット状の瞳孔を見詰めながら微笑みかける。


縦長のスリット状の瞳孔の有利的な面は幾つかある、日差しが明るい時間帯と暗い時で大きさを一瞬かつ自由に変える事が可能な点だ、光の量をほぼ無くすまで細くする事が出来る……故に日差しが強い時間帯でも感受性の高い網膜を護る事が可能だ。


また草原や岩肌の多いような入り組んだ土地で生活するには縦に細長いスリット状の瞳孔が有利と言われている、暗殺するのに向いてるな。


コレの一番良い使い方は俺が決める。


「そ、そうなのだ、キョウが寝ている内に新しい生き物を殺したから持って来るのだ」


「おう」


青いプリーツが大量に入ったワンピースが揺れる、襟元、袖口、裾は蛍光色を基調とした刺繍で彩られていて華やかだ、獣の毛皮でつくられた靴は先が鋭く尖っていて反り返った形状をしている、刺繍で彩られた帽子も素敵だ。


僅かに血がそれぞれを彩っている。


「こ、これなのだ、どーだ!」


―――――――――――――――――人間、白衣を着た人間が死んでいるので。


俺は最高の笑顔で彼女に抱き付いた、エッチおしえたげる。


一気にいくよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る