閑話203・『熊さんの攻撃はわかるよ、わかる』
エルフを襲っていたら軽く抵抗された、ヒリヒリ、頬に痛みが走る、抵抗か、俺が望んだからか?
頬を擦りながら獲物を追う、逃げても良い、生き残ったのはお前だけだから何時の日か復讐に来ても良い、エルフが俺に逆らう?
森の中を歩きながら瞼の裏で弾ける火花を追う、これは楽しい、抵抗するエルフなんて久しぶりで大変よろしい、足場が悪いので苛立ちも募る。
幼いエルフの足でこの泥濘の中を歩くのは辛いだろう、可哀想に、早く見付けてあげて食べてやらないと……怪我でもしていたら大変だ、食べてあげないと。
早く見付けて助けて介抱して食べて、食べて、食べて、食べて、食べて、食べて、食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて食べて。
粗食して粗食してお腹に入れて消化して、消化して見付けてあげて介抱して食べてあげないとなァ、やる事は決まったので少し急ぎ足になる、妖精の感知を使わなくても匂いで追跡する。
「こっちだ」
キョウが処理を軽くしてくれたのか動きに怠惰さが無くなる、エルフライダーの能力の管理下にある時は体が異様に軽くなるか先程のように全身が重くなるかのどちらかだ、軽くなる、心も軽い。
なのに急に奇妙な匂いが混ざるので落ち込む、くんくん、生い茂った雑草を手で振り払いながら少し不機嫌になる、俺はあの子を助けたいのにそれが出来無くなるような、そんな感じ、俺はわかっている。
ほら、死んでる、開けた場所で何度も頭部を噛み付かれたぐしゃぐしゃのソレ、柔らかい箇所は食い尽くされてかたぁい場所しか残って無い、子供は柔らかいって言うけどかたぁい場所もあるんだよ♪
おれのおれのえるふが、食われていたのであきらめます。
「あう、死んでる」
柔らかい部分は無いし、カラスに突かれたのか目玉も無くその奥にある一番美味しいものも無い、あああああ、時間の概念が狂うから、俺は森の中を順調に歩いていたような気がするけど、迷ってた?
森に迷わされるのは久しぶりだ、それがこの子の命を奪った、俺が助けて食べてあげるはずだった幼い命がこのような悲惨な結末に―――――近付いて座る、血で濡れた大地はお尻をひんやりとさせる。
死んでしまったらもうな、ずずずず、剥き出しの骨についた繊維を爪先でなぶる、虐めたかった、護ってあげたかった、美味しい所が無くなったナ、ごめん、でも俺はお前を食わないと生きれないんだ。
ずずずずずず、死骸でも栄養は栄養だ、俺の腕に『吸引』されるソレを見て何かに対して申し訳無い気持ちになる、護れ無かった、食べられ無かった、どれが原因で悲しんでいるのかわからなくなる、太陽は空にいる事に飽きて沈む。
座り込んだまま呆然と闇夜を睨む、唸り声。
「熊だ」
俺の餌を食べたのはお前かと問いたい、爛々と光る目が殺意を告げている。
俺の護りたかった女の子を殺したのはお前かと問いたい、爛々と光っているであろう俺の目が殺意を伝えている。
俺のエルフを死骸にしたのは俺のせいなのかお前のせいなのかと考える、しかし答えは出ずに熊さんの攻撃を避けながら笑う、当たれば首が飛ぶ。
熊さんの激しい口臭、その中にあの女の子の香しい匂いも混じっている、なぁんだぁ、死んでなかった、熊さんの血肉になって俺に復讐しに来たのだ、あはぁ。
生きててくれた。
「そうだ、生きてるならまだ食える、さっきの食べかすでは無くて、んふふ、うれしーの、日頃の行い?」
その中にまだいるんだから出てくれば良いのに、そんな所にいたら熊さんからお前を護れ無いよ。
そうだ、熊さんを殺して熊さんからお前を護ろう、熊さんになって俺を復讐しに来た君を。
よし殺そう。
護ろう。
「上手に出来るかなァ」
上手に殺せたけどあの子も死んだしまった。
また俺を騙してかくれんぼ?
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