第377話・『野田くんと主人公のミンチ肉販売と焦げた蛞蝓』

苦戦しているな、魔物と戦うのは初めてなのか?それじゃなくても癖のある魔物だしなァ。


ドラゴンちゃんの周りには10匹近い魔物の数、俺達が戦った蛞蝓型の魔物で床や天井を這いずり回っている。


汚い粘液をまき散らしながらドラゴンちゃんの周りを警戒するように回っている、さて、どうしたものかと思った矢先に姉ちゃんに背中を蹴飛ばされる。


女の子が困っているのに迷うなって事だと思うけど蹴りの威力が高すぎて背骨が軋んで肉が沈む、透明な唾液を吐きながら肉薄すると魔物達が動揺するのがわかる。


まあ妖精の能力で気配を完全遮断していたからいきなり出現したように感じたのだろう、奇襲するタイミングは俺に任せてくれって言ったのにっ、ファルシオンを抜きながら苦笑する。


ドラゴンちゃんを襲おうとしていた特別大きいそいつにファルシオンを叩き込む、背後から堂々とっ、卑怯も糞もねぇぜ、生きるか死ぬかの世界では死んだ方が間違いだ、んふふ。


「ドラゴンちゃん助けに来たぜ、うぉらあああああああああああ、死ねぇええええええええええ」


「のだ!?」


「野田?!」


ついついドラゴンちゃんの叫びに反応してしまう、野田?……ああ、語尾だけを叫んだのか、理解した瞬間にファルシオンが蛞蝓を叩き潰し、刃では無く側面で叩きつけた、ファルシオンの重量と側面の面積。


まるで卵が潰れるようにぐしゃりと小気味良く潰れる、地面とファルシオンに挟まれて魔物は何の抵抗も出来ずに沈んでゆく、命を奪う事は楽しい、それが自分の大切なモノを傷付けようとする存在なら尚更の事だ。


大切な存在が出来ると二重の喜びを得る、そいつと一緒に生きる事、そいつを害する敵を排除する事、ふふふふふふ、人を好きになるのってだから止められない、止めたくない、もっと殺したい、もっともっと殺したい。


命を奪ってもっと幸せを感じたい。


「ハァハァハァ、潰すの楽しい、斬るのより楽しい、すごぉいぃ」


「う、後ろっ」


ドラゴンちゃんの切羽詰まった声って可愛いなァ、そう思った矢先に顔面が潰される、俺の顔面何処に行ったの?視界が真っ暗、蛞蝓が人間のような腕を振るって俺の頭部を破壊したらしい、背後から奇襲したら背後から奇襲されたよ。


イタチゴッコー、振り向こうとするけどぐしゃっ、擬音が俺の全てを奪うヨ、群がる魔物にリンチにされているようだけど粉々に砕ける肉体がどうなっているのか気になる、ドラゴンちゃんが泣き叫んでいる、優しい子、ああ、お前の為になら殺されたい。


肉片にされても摩り下ろされて液体にされてもすぐに固まって形になるだろ?必死にそれを消そうとしているようだけど無駄、エルフライダーは何度でも再生する、気持ち悪い害虫なんだからさ、この世界の天敵、お前達が頑張っても無意味。


俺は再生するよ、この世界が好きだし。


ドラゴンちゃんを護るから。


「ぅぁ、ぁ、で、と、あ、あー、痛かった、途中から痛く無かった」


再生を終えた瞬間に麒麟の細胞を活性化させてで俺に密集した蛞蝓を焼き尽くす、紫電、紫色の電光が洞窟内に轟く、蛞蝓は一瞬で蒸発して消滅する、あまりの威力に悶絶する暇も無くまるで消えるように姿を失う。


伸びをしながら周囲を見回す、姉ちゃんは岩陰に隠れて手だけ振っている、気遣いで出来るのなら俺の背中を蹴飛ばす時も何かしら考えて欲しかったぜ、ぺたんと地面に座り込んだドラゴンちゃんを見る、尻尾がぴーんと逆立っている。


怖がらせてしまった?


「えーっと、ごめん、化け物なんだ俺、しかも割とどうしようも無い方向性のさ」


「……の、の」


「……語尾まで怯えて忘れてしまったか?」


「凄いのだっっ、うわあああああああああ」


「へぶっ!?」


姉ちゃんには背中を蹴飛ばされてドラゴンちゃんにはお腹にタックルされた。


け、けぷ……ミンチにされる方がマシ。

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