第376話・『姉ちゃんはとても鬼畜だけど鬼つーよりはゴリラ』
姉ちゃんと一緒にいるって事で大概の障害は障害では無くなる、襲って来たのは『魔物』であり歴代の魔王が生み出した人工生物。
ここを管理する如何わしい組織が生み出したドラゴンちゃんを除いて人工的な生命体がこの場で許されるわけが無い……自然をそのままに管理するのが目的なのだから。
まあ、シスターの権力でこの洞窟に足を踏み入れる事の出来たグロリアと俺を除いてなっ、こいつらの処分に追われているのなら俺達が手伝えば良い、しかしどうして突然?
俺が悪いモノを引き寄せたか、それとも魔物の裏で誰かが暗躍しているか、そのどちらもあり得るし、洞窟の入口にグロリアがいるって事がこいつ等は何処から侵入したのだろう?
洞窟内に天井の無い場所があったからそこから?あの高さからねェ、襲い掛かって来る魔物の攻撃を避ける、奇妙な形状をしている、蛞蝓に人間の腕が生えたような見る者をゾッとさせるような姿。
しかも蛞蝓の癖に動きは機敏でずるるるるるるっと軽快な音を鳴らしながら地面を高速で移動する、取って付けたような筋肉に彩られた腕には罅割れて錆び付いた剣を持っている、剣の状態は関係無くあの腕で鈍器を振るえば人は死ぬ。
「何ともおもしろおかしい魔物だぜ、姉ちゃん分離っ」
「……とー」
背中から飛び出す姉ちゃん、その際に思いッきり背中を蹴飛ばしてくれたので一瞬呼吸が停止する、か、可愛い女の子に蹴られたんだ、役得だと思い込めっ、そうしないとまた姉ちゃんを絞め殺そうとして無駄な時間がっ。
決して足場として上等とは言えない滑りのある水で濡れた天井を蹴って姉ちゃんが魔物へと肉薄する、どのように魔物が移動し様と当然のように姉ちゃんは軌道を変える、出鱈目だ、姉ちゃんの細胞があっても俺には出来無い。
しかも蹴飛ばした天井が割れて湿りのある表面の向こうから粉塵がっ、どんだけヤバい脚力してるんだよ、俺は姉ちゃんを背負ったままのポーズで硬直している……いやいや、姉ちゃんマジで人外っ、逆らうのは止めとこう。
「………庫裡蛙(くりあ)!」
…………まるで一本の矢だ、拳を前に突き出して恐ろしい速度で接近する姉ちゃんに恐怖を覚える、対象に接近すると同時に環境を味方にしてかく乱する事に成功している、重力の法則的に物を持ち上げるより持ち下げる方が負担も無いし速度も出る。
つまり上空からの奇襲に対して生物は『後追い』になってしまう、蛞蝓の体が四散して崩壊する、その反動のままに横っ飛びにもう一匹を粉々に砕く姉ちゃん、場は静寂に包まれる、さらに破砕された瞬間に魔物の持つ剣を掴んで投げる。
さらにもう一体、岩肌に突き刺さったそいつは汚い粘液を撒き散らしながらやがて活動を停止させる、お、終わり、この場の魔物は全部倒したようだ。
こわ。
「……敵よわい」
「……姉ちゃん強っ」
「……むふー、褒める事は大事」
「姉ちゃんマジゴリラ」
「……とー」
「あぶねっ!?」
ぴょん、小柄な体が宙に浮かんだと思ったら拳を構えて音速で飛んで来やがった、咄嗟に裂けたモノの空圧で開いた瞳が大きく揺さぶられて視界が回る、瞼を閉じる暇さえない事に絶望する。
おぇぇ。
「……褒め方が雑」
「姉ちゃんマジでブウィンディゴリラ」
「……たー!」
「あぶ、ぐぇぇ」
同じような攻撃パターンだと思ったら避けた瞬間に足を曲げて俺の首を鎌のように深々と突き刺す、姉ちゃんの足、一瞬ぷにってしたなぁと思ったら容赦無く鉄の硬度で骨を折りに来る。
褒め方が雑って言われたから細かくしたのにっ。
「けほっ、かほっ」
「……お姉ちゃんマジで美少女可愛いと言うのだー、言えー」
「かはっ、ごほっ」
物理的に言えるかボケェ!
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