第373話・『姉ちゃんはずるるると弟から排泄されるもの』
目覚めは何時も突然で何時も意識の外にある、自由にそれを操れたなら俺も少しは人間に近付けるかな?
体中のあちこちが痛い、関節が軋みを上げて悲鳴のように鳴り響く、何処もかしこも壊れかけの肉体、いや、成長過程?
人間からエルフライダーに、エルフライダーから何かに、進化の途中?少なくとも成長では無いような気がする、正しくコレは進化だ。
自分自身を肯定しないとこんな『不便』な体に満足など出来るものか、エルフを食べないと歩く事すら出来無い、取り込んだ一部の処理で容量が埋まってこの様だ。
消化したくない、一部を消化すれば話は早いのだがそうすれば一部の皆が完全に『古い一部』になる、それをしたら駄目なのだ、かつての記憶の残骸が俺に告げている。
「ここ、何処だ」
記憶が曖昧だ、えっと、可愛いドラゴンをお持ち帰りしようとしたらお持ち帰りされたのか?緩められた胸元を正しながら介抱してくれていたのかと納得する。
藁が敷き詰められた小さな空間、立ち上がろうとすれば天井に頭をぶつける事になる、軽く腰を起こしながら伸びをする、曖昧な記憶が不安を呼び起こすわけでも無い。
生活臭のある小ぢんまりとした空間、あのドラゴンの住処だよな、あれだけ小さいとこの空間でも十分なんだろうなァ、あの子の姿は無い、餌でも探しに行ってるのか?
やる事も無いので部屋の中を四つん這いになって歩きまわる、俺もとうとう獣になっちまったか、狭い所が好きなんだろうけど俺には狭すぎる、そして低すぎる。
何度か頭をぶつける、あの子も四つん這いで生活してるのかな?まあ、人間では無いし、それでも良いのか?地味に膝が擦り剥けて痛い、うあ、頭もぶつけるし、さ、最悪っ。
「いててっ、何の資料もねぇーな、あいつがどんな生き物か知りたいのに」
部屋とは言えない住処を漁っても何も出て来ない、保存食やらがある事に少し安心する、生きて行く上で最低限の知識は保有しているらしい、しかしあんな小さいガキをこんな危険な場所に放置するかね。
あいつがどれだけ強かろうが何だろうが関係無い、ガキはガキだろう、しかも言いつけを守るような賢いガキだ、俺がこの旅で出会った多くの『悪意』を持ったロリガキより随分とまともな存在だ、そいつらはどうなった。
そこから先を考える事は出来ずに、横たわる、藁の敷き詰められた地面は俺を優しく包み込んでくれる、あー、あいつが帰って来るまでもうひと眠りするか、このまま逃げ出したらあいつも凹むだろうしな。
『………』
「ひっ」
ずぶっ。
なんの気配も無しにいきなり俺のわき腹から姉ちゃんが顔を出す、その突然さに体を大きく震わせる俺っ、こわっ、姉ちゃんこわっ、体を縮ませるようにして震える俺っ、ずるるるるるるる。
この体液は何って名前の体液?そんなものに包まれて下品な音を出しながら俺の体から具現化する姉ちゃん、ぷすぷすっ、放屁のような音と湿気のあるソレ、頭を抱える、勝手に出て来るのは勘弁してくれ。
「姉ちゃんっ、勝手に出て来たら駄目だって言ってるだろ」
「……るさい」
「へぶっ」
顔面は凹んでない?つか五月蠅いぐらいちゃんと言えっ、紅紫こ(こうし)の色彩を持つ髪は腰の辺りでバレッタで留めている、太腿近くまで伸びた髪の毛は髪型と合わさって犬の尻尾のようだ……彼女に合わせて揺れる。
瞳は澄んだ水色で畔の水面のように穏やかだ、全体的に細く研ぎ澄まされた肉体は機能性のみを追求したかのように美しく無駄が無い、機能美を極めたかのような素晴らしいものだ。
そんな美しい肉体で弟であり妹でもある俺に容赦無く拳を振るう。
「うぅ、鼻血が止まらないぜェ」
「すんすん」
形の良い鼻をすんすんしながら周囲の匂いを確認する姉ちゃん、畜生、鼻血が止まらない。
「すんすん………同胞のにおい」
「なっ、それってどーゆー事だ!姉ちゃん!」
「るさい」
「べぶっっっ」
鼻血がもっと出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます