閑話198・『鯉でも鱚でも恋でもキスでも2」
キョウの太ももの上に頭を重ねながら寝た振りをする、くんくん、性の匂いだ、キョウはいやらしいから。
いやらしい私、キョウの温もりを感じていると体が火照る、奇妙な気持ちになる、キスして欲しい、単純な欲求。
目の前で美少女が寝ているのだから男なら当然するでしょう、やるでしょう、なのに頭を撫でる手つきは何処までも優しく性的なものは感じない。
くんくん、ここはこんなにも甘くて卑しい匂いがするのに酷いなァ、もう、これでは兄と妹のようだよォ、口惜しい、嘆かわしい、でも撫でるのは許す。
「しかし良く寝るな、こいつ」
「――――――――――」
ほっぺを突かれる、プニプニしてるだろうがァァ!ふふん、ツルツルでプニプニの擬音祭だ、でも良く考えたら同じ体をしているキョウからしたら何が楽しいのだろう?
こっちとしてはキスへの期待もあるのであまり虐められるとイライラしてくるよ、ぷにぷにぷに、ええい、キョウにも同じモノがあるのに何でそんなに楽しそうなの?
少しだけ瞼を開けて観察すると何ともだらしのない顔をしたキョウの顔、瞳は柔らかく細められて頬も赤く口元も締まりない、猫を愛でる愛猫家のような表情、ぺ、ペットじゃないんだけどなァ。
しかしここで口を開けば寝たふりをしている事に気付かれる、眠り姫を演じている事に気付かれる、さすればキスは遠ざかる――――何て事だろう、我慢だ、我慢しなきゃね。
「うりうりうり」
「かぷ」
しかしからかう様に頬っぺたを突かれるのは流石に腹立たしい、怒りに口が勝手に開く、キョウの指を甘噛みしながらしまったと反省、もぐもぐもぐ、美味しい、美味しい味。
何時の事だったかな、キョウが『指』を大量に食べて吐瀉した事があったけどその気持ちが何となくわかる、もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ、噛んでいると皮膚がふやけて食べ頃になる。
「うりうりうり」
「うががががが」
そんな事を思っていると調子に乗ったキョウに口内を蹂躙される、お、女の子が出すには些かどうなんだろうって声が漏れる、けぷ、あまり深くに指を入れられると吐き気がっ。
普段は私がキョウを虐める事が多いけど今の私は眠り姫なので抵抗出来ない、日頃の鬱憤を晴らすかのように指が口内の奥へ奥へと、おろろ、、だ、だめ、我慢しなきゃダメ。
え、キスされたいだけで吐きたいわけでは無いんだけどっっ。
「死ぬわっ」
「イテェ」
強く噛み付く事で指が一瞬遠ざかる、その瞬間に叫んで意思を伝えるがキョウは邪笑を浮かべたまま再度指を口内に侵入させる、あまりにも自由なその振る舞いに指を強く強く噛み締める。
美味しそうだと思ったけどやっぱり美味しいじゃん、皮膚を裂いて肉を裂いて骨に届く、口内に血の味が広がる、私と全く同じ血、だから何よりも私に馴染む、私に溶ける、それは必然だ。
なにがしたかったんだっけ。
キョウの血が飲みたかった?
そうだっけ。
「おえ、けほ」
「染まった」
私の口の中は血で染まっている、キョウは満面の笑みでそう呟く。
けれど常人が見れば狂った笑いにしか見えないだろう。
私には無垢な少女の笑みに見える。
「はぁはぁはぁ」
「口をパクパクさせて鯉みてぇ」
「こ、恋ですぅ………んふふ、キョウ、なんのつもり?」
「キスをしたかったんだぜ、ん」
「鱚?じょーだん、鱚でも恋でも何でも良いから……けほっ、ゆっくりでいいから無理しないで」
「?」
あまり期待し過ぎるとこうやって呆気無く壊れるから。
長い目で見よう。
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