閑話197・『常識は常識』
前は普通にキスをしてたのに上手に出来無くなったのは理由がある、それはキョウが恋を自覚したからだ。
自覚?言い方を変えれば諦めとも言える、自分自身は浮気じゃないから大丈夫……そのように諦めてしまって私に絡めとられた。
そのはずなのに所作も表情も全て初心で全て可愛いから始末に終えない、何時もの街を何時もの様に探索する二人、気のせいか道端に草花が増えたような気がする。
そのどれもが美しい色合いをしている、風の流れも穏やかだし空気も澄んでいる、どうしてだろう?キョウと指を絡めてトコトコ歩く、トコトコトコトコトコ、何もしないんかいっ。
「うらぁ」
「いきなり腕を売り回してどーしたよー、やめてやめて、俺の肩が壊れるから止めてくれ」
「壊れてしまえ!女の子を抱けない肩なんて壊れてしまえ!今ここで!!」
「物騒な事を言うもんじゃねぇーぜ」
左右の違う色合いの瞳を瞬かせてキョウが狼狽える、最近になって気付いたのだがキョウは恋人に対して自分から積極的にアクションを起こすことが少ない、グロリアとの関係性を見ていてもそうだ。
アクとの関係性は逆だった、キョウが何時もアクに対してアクションを起こしていたしアクもそれを受け入れていた、思えばあの頃のキョウは今のグロリアや私のように他者を支配して洗脳する事に夢中だった。
アクとキョウとの関係を問われたら純愛とは言い難い、キョウはアクを物のように扱っていた、関係性は変わったが結局は支配者として接していたように思える……そもそも使徒とキョウの関係性を考えればそうなるか。
創造主と同じ魂と血を持っているのだから仕方が無い、だけどそれは私が素直に受け入れられないだけかも??……キョウとアクは確かに支配者と支配される者だったけど、だけど、幸せそうだった、二人一緒で幸せそうだった。
私は暗い闇の底でそれを見詰める事しか出来無かった、だから今こうしている。
アク、ざまあみろ。
愛してたよ。
「わ、わかった、こうやって肩を腕で寄せればより恋人っぽいだろ!ほら、肩を蹂躙しなくて良かったろ?」
「んふふ、惜しい、惜しいなァ、あともう一歩だよォ」
「教えてくれないとわからないぜ」
「バカだなァ」
「……ほら、行くぞ」
キスして欲しいけどそれを素直に口にすれば関係性が変わるような気がする、私は常にキョウの優位に立っていないと駄目なのだ、そうしてキョウを見守り続けるのが私の役目。
だからお互いに恋を自覚したところで変わっては駄目な所も確実に存在する、キョウを狙う存在は多い、しかも今が変貌した麒麟もいる、色々と考えれば振る舞い方にも気を遣う。
それが自分自身でもだ、下手にキョウに自由にさせても全て忘れてアクとの関係を再開させるかもしれない、彼女は壊れたままこの体の内の内に確かに存在しているのだから。
もう二度とキョウと愛させない。
「キスだよ、キス」
「あぁ?………う………駄目だぜ」
口元に手を当てて戸惑うキョウ………折角言葉にしてあげたのにね、命令口調じゃないし、強請る感じでも無い、素直に要望を口にしたのに邪険にされると少し傷付く。
視線が泳ぐ、難破船かっ。
「そーゆーのは夜にならないと、しちゃ駄目だぜ」
「古風っ、子宮にロリを引きずり込む化け物が口にする台詞じゃないよォ」
「そーゆーのは夜以外でもして大丈夫だぜ」
「ど、何処から教えれば良いのやらだよォ」
壊れ方もここまで来るとどうしようもないね。
もう。
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