第369話・『輪切りドラゴン』
そんなに血が溢れていては能力を使わなくても血の臭いで追える、すんすん、鼻を鳴らしながらなるべく怖がらせ無いように微笑む。
餌を餌として認識しているが今までの餌とはかなり違う、憧れのドラゴンの血が入っているのも良い、どうやってこいつを製造したんだろう?腕の良い錬金術師がいるのかな。
「みぃつけぇたぁ」
「な、に」
一瞬で距離をとるが意味は無い、この距離なら何時でも襲える、何時でも食べられる、お腹は空いているのに体が何故だかそれ以上の事を求めない、少し前の『友達』の件が地味に効いている?
自分自身がそこまで繊細な存在だとは思わないけどさ、ぐるるるるるるるるるるるる、下品な音が二重に響き渡る、お腹の音と喉が鳴る音、エルフライダーの本能が俺を支配して俺を壊す、何時もの事だ。
ちゃぷ、地面には透明度の高い水が広がっている、ツルツルの岩肌は意識をしてないと呆気無く転んでしまいそうで緊張する、目の前の餌はこの地に慣れているだろうからなァ、また逃げられるのも面倒だ。
「な、何なのだ、お前は―――いきなり攻撃してっ」
「いきなり後ろに立ったお前が悪い、ファルシオンが斬りたいって強請るからさ」
「むっ、もう治ったのだ」
「直っただろ、化け物、普通の生き物はそんなにすぐに再生しないぜ、うーん、食っても食っても無限に再生する生き物なら嬉しい」
「なっ」
「凄くスゴクうれしい」
頬に血が走るのが嬉しくて攻撃された事が嬉しくて心が軽くなる、逃げても無駄なら殺すってか、一瞬何が起こったかわからなかったけどドラゴンってのはこんなに俊敏に動けるのか。
最初から最速、種としての能力の高さに驚く……それともこいつに組み込まれているドラゴンの細胞が特別凄いのか?吸収してじっくり解体したい所だがそれ所では無い、頬の傷を意識した瞬間にわき腹に血が滲む。
服に染み込むその感触に流石に苦笑する、頬の傷は特に意味の無い目くらまし的なものなのな、それを意識した瞬間に追加の攻撃、殺さないのはどうしてだろう、俺があいつに興味あるようにこいつも俺に興味がある?
「好戦的じゃん、イテェ、いてぇええええええええ」
「え、だ、駄目だった?そーゆー流れだと思ったのだ」
「あー、もう……服洗わないと」
「ぇぇぇ」
凄く小さな声で溜息を吐き出す幼女、声の方を見てみれば天井に張り付いている、ヤモリ的な感じでっ、いいなー、あの能力、俺も欲しい、空を飛べるけどそれとこれとは話が違うぜ。
鋭い常で切り裂かれたのか?肥大化した爪から血が落ちる、天井から落ちて来る雫と混ざって俺の血が――――何だか食う気が、それにこいつは面白い、友達になれるかな、餌になるのかな。
「お前、強くて綺麗だな」
「いや、責めた直後にいきなりどうしたのだ」
「飴と鞭でお前をさ」
「…………攻撃をするのはやめるのだ、さっきの大剣での攻撃を謝って欲しいのだ」
「?輪切りにしようとしてごめんなさい」
「わ、輪切りにしようとしていたのか……」
「すまん」
後ろに立たれたのだから仕方が無い、手加減はしたけど死んだら死んだで体に取り込んで再生すれば良いだけ。
グロリアの後ろに立たなくて良かったな、あっちは容赦ねぇぜ?
「謝ったぜ、仲直りしよう」
「わ、輪切り」
輪切りはどうでも良いぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます