閑話196・『鯉でも鱚でも恋でもキスでも」
グロリアには自然とキスが出来るようになった、出来無かったあの日を忘れてしまったように。
付き合い始めた年月の長さなのかそれとも人間は過去を忘れる生き物なのか、両方な気がするし、そうでも無い様な気もする。
キョウと同じ世界で同じ時間を過ごしながら腕を組んで唸る、すやすやと俺の膝の上で寝ているキョウ、こいつの頭軽いなァ、軽いのに頭良いなァ。
矛盾を感じる、俺の頭も同じように軽いのに頭も悪い……何だろう、矛盾のついでに理不尽まで感じてしまう、でもいいか、俺の代わりにキョウが『考えて』くれたら。
しかし今回のコレは聞く事も考えて貰う事も出来無い、何故なら自発的な行為で無いと意味の無い事だからだ、それでいて自発的な好意で無いと……む、難しい。
「しかし良く寝るな、こいつ」
「――――――――――」
寝相も良いし寝言も言わない、真っ白いほっぺを突くけど微動だにしない、単純に指先が張りのある皮膚に弾かれる様子は見ていて気持ちいい、乙女の柔肌はツルツルでプニプニしてる。
大人とガキの境界線に立っているギリギリの危うい美しさ、俺の一部はみんなロリだけど俺とキョウはロリってわけでは無い、大人ってわけでも無いけどさ、シスターの細胞がこのギリギリの危うい美貌を永遠に与えてくれる。
キョウの顔を見詰めてると変な気持ちになる、鏡に唇を重ねるのと全く同じ行為なのにドキドキする、股を擦るようにするとキョウの頭がころんと動く、すーすーすー、寝息は穏やかで起きる気配も無い、キョウは何時でも俺の為に無茶をしている。
エルフライダーとしての能力による暴走、暴走する一部の調整…………全てキョウに任せっきりだ、何か手伝いたいとは思うけど具体的にどうすれば良いのかわからない、麒麟なんて俺の命令を素直に聞く癖に裏では色々と企んでいる。
「うりうりうり」
「かぷ」
キスのタイミングを計ろうと指で突いてたら小さな口に指をくわえられる、桃色の潤いのある唇に指が吸い込まれる過程は何処か性的なモノをイメージさせる、それでも何故だろう、興奮はしない。
もごもごと間抜け面で指を甘噛みしているキョウの様子が何処か滑稽で愛らしい、こいつにも母親の記憶があるんだもんなァ、あの小さな村での思い出、少しだけ戻りたくなった、ほんの少しだけ。
だけど今はグロリアもいる、キョウもいる、夢は叶えていないしエルフライダーの能力がどのような形で表に出るかわからない、傷付けるための生き物、エルフライダーである俺は故郷には戻れない。
「うりうりうり」
「うががががが」
口の中を指で蹂躙すると苦しそうに唸る、吐くのは流石にやめてくれ、形の良い歯並びを確認するように指で弄る、エロい行為だなぁと思う反面、キョウの苦悶の声が心地よい。
死んじゃう?
死んじゃえ。
死んじゃやだ。
ざーーーざーーーーーーーざーーーーーーーーー。
「死ぬわっ」
「イテェ」
思いッきり噛まれた、指から血が流れるのがわかる、しかしそのまま血を擦り付けるようにしてキョウの口内を蹂躙する、引き裂かれた肉から血が溢れ出る、その血でキョウの白い歯を赤く染める、おれにそめるの。
何度噛んでもいいぜ、血が多く出るだけだ、作業効率が高まる、もっと噛んで骨まで噛んで血を沢山出してよ、お前の白い歯も桃色の唇も赤黒く染めてやる、それがしたかったそれがやりたかったそうしたかったそうなんだ。
なにがしたかったんだっけ。
「おえ、けほ」
「染まった」
「はぁはぁはぁ」
「口をパクパクさせて鯉みてぇ」
「こ、恋ですぅ………んふふ、キョウ、なんのつもり?」
「キスをしたかったんだぜ、ん」
「鱚?じょーだん、鱚でも恋でも何でも良いから……けほっ、ゆっくりでいいから無理しないで」
「?」
俺は無理をしていないぜ……キスをしたかった。
したかったのになんでだろ。
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