閑話195・『綺麗な自分に酔い痴れる2』
何でも無いよ、そんな風に努めているキョウの顔を見て心がざわつく、グロリアと一緒にいる時はもっと余裕が無いのに。
グロリアに大人として見られたい、そんな欲求がキョウを『可愛く』させる、だけど同じ恋でも私に対しては違う、余裕のある表情。
湖畔の街で寄り添いながら雲の形について呟く、だってやる事は無いしさァ、ここは私とキョウだけの世界、あるべきものがそこにあるだけで娯楽は無い。
だからベンチに座りながら無意味な時間を過ごす、無意味な時間を意味のある時間にする為に私はキョウの体に体を擦り付ける、えっと、えっと、えいえいえいえいえい。
どんな風に愛情を伝えれば良いのかわからない、キョウと私は同じ存在、結局はその『枠』から外れる事は出来無い、つまりは恋愛について無知、それでいて無謀、うぅうう。
えいえいえいえいえいえいえいえい、見栄えはあれでも出来る事をするよ、くすん。
「ぐいぐい来る女は苦手だぜ」
「へえ」
少し困ったようなキョウの照れ笑いの表情についつい呟いてしまう、こんな顔をするキョウは珍しい、何時もは朗らかに笑うかエルフライダーの能力に汚染されて狂気の笑みを浮かべるかの二択。
それを私の行動に起因するものと知って嬉しくなる、こんなに下手な愛情の伝え方でもキョウにはちゃんと伝わっている、その事実が私をおかしくさせる、恋は人をおかしくさせる、それが自分自身でも。
キョウが煩わしそうに溜息を吐き出す、だけど心の底から嫌がっているわけでは無い、キョウも無意識に小刻みに体を揺らしている、キョウの体は柔らかくて良い匂いがする、それって私の体も柔らかくて良い匂いがするって事だよね?
自信出て来た。
「ん?どしたァ?」
「あんまりぐいぐいするんじゃねぇ」
「………ど、童貞か、女の子にこんな事させて、少しはもっとねェ」
「好きな女に触れられたら誰でもこうなる」
「す、好き」
悪態を吐いた瞬間に絡めとられる………キョウが私の事を『好きな女』って言ってくれた、それはグロリアだけの特権で自分自身である私に捧げられる言葉では無いのに、キョウを見詰める、脳味噌がじんわりと溶けるのがわかる。
まるでかき氷のように全ての結束が解けて溶けて消えてゆく、欲しかった言葉はやや反則的な威力を持って私を蹂躙する、ぽけー、間抜けな表情をしている自覚はあるけどそれを恥ずかしいと思う羞恥心が消えてゆく、キョウを見詰めるのに邪魔だから。
しかもそのかき氷のシロップにはアルコールが混ざっている…………キョウに寄り添うようにしてじーっと見詰める、私の顔が真っ赤なのと同じようにキョウの顔も真っ赤、二人は何時だってお揃い、生まれた時も、死ぬ時も、ずっとずっと同じだもん。
ずっと恋して、ずっと愛して。
「んふふ」
「う、あ」
「んふふふ」
遥か年下の弟のように初心なキョウ、そして初心な私、初心初心な二人はお互いの温もりを知って少し大人になる、裸で皮膚を重ねなくてもこんなのでいいんだ、えっちはしたけど今とは全然違う。
とても不思議な感触、とても不思議な感覚、とても不思議な快感。
とても不思議な一人、気付けばキョウに押し倒されている。
あれ、えっと、これからどうするんだっけ。
どきどき。
「はふぅ」
「うぅ、キョウ、ちょっと重いよォ」
「これ、このきれいなのおれのォ」
「あ……そうだよ、キョウのだよォ、私はキョウのキョウだもん」
頬を重ねるキョウを肯定する、だってそれは当たり前だから、
私はキョウに恋する為に生まれた。
愛する為に。
ねぇ……これからどうするの?!
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