閑話193・『ぐぇぇぇと叫ぶのだ2』

遊びたいのに遊べない、絡み付く腕と柔らかくてムチムチの太ももが俺を逃がさないぜ、女に支配されるってこんな感じなんだろうなァ。


納得は出来るけどそれに全て身を任せている現状に不安になる、お庭で遊ぼうとしたらキョウに絵本を読んで上げると言われて近付いたらコレだ。


え、絵本も読んでくれないし、それよりも俺を愛でる事に夢中なキョウ、意味も無く体のあちこちを触られて少しだけ不愉快な気持ちになる、だけどそれを口にする事はしない。


最近は俺の行動を『自制』させるような方向に持って行く事が多い、俺もバカでは無いのでわかっているぜ、キョウは俺の事をバカバカ言って下の見るけどな!そりゃキョウよりは要領は悪いぜ?


だけど考えて少しずつ成長する事は出来る、その事をキョウにもわかって欲しい、俺の愛する女はみんな俺を子供扱いして保護しようとする、それは男として普通に傷付くだけ、何故わからない。


「んふふ」


「キョウの太ももは柔らかいぜ、でも俺は遊びたいんだけど」


「ここにいなよォ」


「でも……晴れてるし、お出かけ―――」


「だぁめ、ここにいなさい」


優しく咎められる、貴方のお家はここなのよ、その言葉の裏に隠された意図を読み取って溜息を吐き出す、キョウの太ももは気持ち良いけどずっとここにいるわけにもなァ、遊びたい、子供ですから!


少し気恥ずかしくなって顔の向きを変えるけどキョウが覗き込む様にずっと観察して来る、恋心を自覚してみれば単純な事だ、俺は自分自身に恋をしているし他人であるグロリアにも恋をしている、これって浮気にならないだろ?


髪の毛を撫でてくれるけど癖ッ毛なので指に絡まる、それを丁寧に丁寧にほぐして手櫛で整えてくれる、まあ、遊ぶのは何時だって出来るか……キョウに甘えるのも何時だって出来るんだけどなァ、困った半身だ、困った私だ。


俺を支配したいだなんてさ。


「最近のキョウは俺を甘やかして目に届くところに置いて……何か企んでいるのか?」


「んふふ、悪い事」


「わ、悪い事を企むのは止めて欲しいぜ……また封印するのは嫌だぜ」


「グロリアの事じゃないから安心しなよォ、私も乙女なもので色々と大変なの」


企みの内容はわかっている、俺をお前の恋人にする事だろう、俺とお前が別々の肉体を持って現実世界で結ばれる、一つの精神を二つの肉体に分離して精神が崩壊しないのか?お前の考えは何処までが本当で何処までが嘘なんだ?


見上げても美しい顔がそこにあるだけで何もわからない、俺と同じ顔なのに俺と違う夢を持っている、始めは同じだったのにどうしてここまで違ってしまったのだろうか?答えの無い疑問が頭の中で駆け巡る、しかしやはり考えるだけ無駄。


こうやって見ると本当にグロリアにそっくりだ、俺もキョウもグロリアと同じ細胞を得て良かった、もっともっとグロリアに近付きたいよォ、キョウに近付いたよォ、ざーざーざーざーざー、あれ、これ、さいしょはだれのさいぼうだったっけ。


あ、乙女ってもしかして。


「へ、もしかして、え、俺がまだなのに生理」


「違うヨ」


「そうだよなァ、心も体も同じなのに生理の周期だけとか」


「黙ろうねェ」


「ぐぇぇぇぇ」


「ああん、潰れた蛙のような鳴き声で可愛いよォ」


「げほげほっ、ふーん、どれどれ」


「ぐぇぇぇぇ」


首を絞めたり絞められたりするとどちらがどっちだかわからなくなるよォ、んふふふ、私は今どっちだっけ、おれ、わたし、おれ、おれ、わたし、ぐろりあ、おれ、わた、おれ、おれ、おれ、おれ。


おれでいたいよォ、んふふ。


俺だぜ。


「わはははは、女の子がしたら駄目な声だぜ」


「げほげほっ、ふーん、どれどれ」


「ぐぇええええええええ」


「あはは、確かに女の子がしたら駄目な声だねェ」


どっちかわからなくなったよォ。


でもどっちでもいいぜ。

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