閑話192・『ぐぇぇぇと叫ぶのだ』
あまり難しい事を『考えられるよう』になると厄介なので最近はキョウを叱る事無く甘やかしている。
否定をせずにキョウの言葉を全て肯定してどんな些細な事でも褒めて上げる、キョウは単純だから瞳をハートマークにして喜ぶ。
クスクスクス、心の中で自分自身を下にみる、仕方無いよね、だってキョウっておバカで可愛いんだもの、愛している、愛しているからバカにしていいの。
私以外がキョウをバカにしたら消す、殺すのでは無く消す、何も無かったように、過去から未来まで全てを消す、それが他人だろうが一部だろうがキョウをバカにしていいのは私だけ。
愛していいのも私だけ。
「んふふ」
「キョウの太ももは柔らかいぜ、でも俺は遊びたいんだけど」
「ここにいなよォ」
「でも……晴れてるし、お出かけ―――」
「だぁめ、ここにいなさい」
優しく咎めると顔を赤くして黙り込む、私の毒はキョウには通用しない、でも真摯な愛情なら容易くキョウの心に浸透する、年相応の幼い表情をするキョウ、小さなお鼻がピクピクして可愛いね。
キョウは何処を見ても小さくて可愛い所しか無い、それが私の手の内にある事を実感して唇がつり上がる、駄目だ、この笑みをキョウに見せては駄目、捕食者の笑みはキョウに見せるものでは無い。
癖ッ毛を撫でて上げると伸びをして幸せそうに受け入れてくれる、湖畔の街を見下ろせる小高い丘の上で自分自身を愛でる行為に幸せを感じる、これ以上の幸せは無いとまで言いきれる、生まれて来て良かった。
私がキョウで俺がキョウでキョウで良かった。
キョウでいい、まだ。
「最近のキョウは俺を甘やかして目に届くところに置いて……何か企んでいるのか?」
「んふふ、悪い事」
「わ、悪い事を企むのは止めて欲しいぜ……また封印するのは嫌だぜ」
「グロリアの事じゃないから安心しなよォ、私も乙女なもので色々と大変なの」
空を流れる雲は限りのあるこの世界で何処まで行くのだろうか……それとも限りがあると思い込んでいるのは私達だけで現実の世界のように限りない世界なのだろうか?
そんなものを確認するよりも間近にあるキョウを愛でる事の方が重要な事のように思える、こうやって私の匂いを精神に擦り付けて所有権を主張する、獣のような原始的な行為。
それでいて原始的な好意でもある。
「へ、もしかして、え、俺がまだなのに生理」
「違うヨ」
「そうだよなァ、心も体も同じなのに生理の周期だけとか」
「黙ろうねェ」
「ぐぇぇぇぇ」
「ああん、潰れた蛙のような鳴き声で可愛いよォ」
「げほげほっ、ふーん、どれどれ」
「ぐぇぇぇぇ」
細長い腕が下の方から一瞬で伸びて首に絡み付く……キョウは容赦無く首を締め付ける、十本の指がそれぞれの役割を持って喉元に深々と沈む。
容赦無いよね、結局はキョウを見下すのも好きだけど見下されるのも好き、虐めるのも虐められるのも好き、愛するのも愛されるのも好き、キョウがくれるものは何でも好き。
くれないものも好き。
「わはははは、女の子がしたら駄目な声だぜ」
「げほげほっ、ふーん、どれどれ」
「ぐぇええええええええ」
「あはは、確かに女の子がしたら駄目な声だねェ」
下品な声が出ないようにもう少し強く締め付けて上げるね。
そしてそれを私にもしてね。
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