閑話189・『自分でも女の子扱いしないと嫌われるぞ2』

キョウの横で寝転びながら舐めるように観察する、どうも様子がおかしい………キョウは隠し事が苦手だからすぐにわかるよォ。


私を出し抜こうと考えている、私が保持している記憶を欲しがっている、その為に自分自身である私を裏切ろうとしている、全ては私の掌の上なのにね。


どうしてそこまで過去にこだわるのだろうか?今は今で良いじゃない、そう、キョウには私がいる、過去も今も未来も私がいる、だから今だけ見てれば良い。


困ったなァ、一度全て掻き消してしまった方がキョウの『心』が楽だろうか?全ての記憶を奪ってまた俺と私で最初から始めれば良い……んふふ、だけどねェ。


グロリアもいる、クロリアもいる、キクタもいる、麒麟もいる、恋敵と反抗的な一部達がそれを止めるだろう、面倒な一部が増えたよね全く、溜息を吐き出す。


一部が増えて手駒が増えた、キクタを何度も取り込んで麒麟も手に入れた、キョウを護る為に強力な一部が手に入った、しかしそれがとても反抗的だ、私にだけ。


麒麟は麒麟で恋に狂ってとてもまともな状態では無い、キョウの魅力と瘴気で脳味噌が蕩けてしまって耳の穴から爛れ落ちている、困った困った、んふふふ、どうしようか。


「横で寝転んでる半身よ」


「んんー、キョウったら最近は悩んでばかりだねェ」


「だってキョウが何にも教えてくれないからさ」


「教えるべき事は教える、教えるべきでは無い事は教えない、単純な構造なのにどうして納得しないかなァ」


「単純だからこそムカつくんだけどな」


「むか、つく?」


「そうだよ、自分が知らない事を自分であるキョウだけが知ってたら寂しくなるだろうが」


「寂しくなるって言い方がいいね、同情を誘ってさ、教えないよォ」


「ちっ」


「舌打ちは一人の時にしましょうねェ」


最近は少し行儀が悪くなったねェ、腹黒グロリアの影響かなァ、どうしても自分の過去が知りたいようだけど教えて上げない、アクも部下子も他の一部もいらないもん、いらないものを思い出してもどうしようもないしね。


キョウ自身である私がいらないと思っているのにどうしてキョウは知りたがるのだろうか、同じキョウなのに不思議だねェ………この差異が二人をもっと強く結びつける、男と女として区別する、男女としてありのままに受け入れられる。


キョウの赤ちゃんが欲しい。


「キョウってさ、強いよな」


「そりゃ、キョウよりはね」


「お前は俺だろ」


「俺は私だよ?」


「矛盾だぜ、そーゆーのを矛盾って言うんだぜ」


ふふ、二人は一人なのに結ばれたいとか赤ちゃん欲しいとか考えている時点で矛盾だよね、キョウに改めて言われると頬が赤くなって興奮する、息が乱れる、心臓の鼓動がはやくなる。


「な、何だよ」


「にひひ、私はキョウだよ、だからキョウを護ってる」


「知ってる」


「……でもね、キョウは私をちゃんとわかってるのかな、好きって事」


「知ってる」


「ううん、知らないね、グロリアがキョウを『好き』なのと同じ、自分自身でもね」


「………」


「早く気付いて」


睨む。

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