閑話188・『自分でも女の子扱いしないと嫌われるぞ』
どちらかがどちらかを出し抜こうとしても結局は一人なので出し抜くも何もあったもんじゃない。
キョウは俺に内緒で何事かを企んでいるし、俺は俺でキョウから必要な情報を盗もうと企んでいる、そもそもどうしてキョウの方が権限が強い?
湖畔の街は今日も静かで青空が広がっている、丘の上から街を見下ろしながら欠伸を噛み殺す、いや、俺の方が権限は強いのか、一部の使用に関しては俺に一任されている。
それ以外も全て俺の方に権限がある、しかし過去の出来事については全ての記憶をキョウが保有している、キョロはさらに権限が下だしなァ、うーん、俺の過去を知りたい。
勇魔に出会った時も過去をほのめかすような…………………しかし、記憶は薄れて消えてゆく、だけど何度も何度も疑問が浮かぶって事は何度も何度も忘れてるって事で……ポンコツな自分を反省する。
「横で寝転んでる半身よ」
「んんー、キョウったら最近は悩んでばかりだねェ」
「だってキョウが何にも教えてくれないからさ」
「教えるべき事は教える、教えるべきでは無い事は教えない、単純な構造なのにどうして納得しないかなァ」
「単純だからこそムカつくんだけどな」
「むか、つく?」
「そうだよ、自分が知らない事を自分であるキョウだけが知ってたら寂しくなるだろうが」
「寂しくなるって言い方がいいね、同情を誘ってさ、教えないよォ」
「ちっ」
「舌打ちは一人の時にしましょうねェ」
こうやって二人で過ごしていても結局は一人だもんなァ、同情してもくれねぇし、過去の一部に関しては教えるつもりは無いらしい。
俺の過去を一人で抱え込んで辛くは無いのだろうか、だって俺がそれを思い出したらどうにかなっちまうんだろう?それなのに嫌な顔一つせずにさ。
俺は私は私は俺だ、だとしたら悲しい過去もこいつの精神に何かしら影響を与える事になる、俺だけ重荷を投げ捨てて幸せに生きている、もしかして俺って勘違いしてるのか?
キョウが一人で俺の記憶を独占して支配しているのでは無く、キョウが一人で俺の過去の傷を………俺は、何時まで子供なんだろう、何時までキョウやグロリアに護られてるのだろう。
もしかして俺が気付いていないだけで俺を護ってくれてる人が他にもいるのかも?不安になる、自分自身がとても小さな存在に思えて全力で何かを叫びたくなる、下唇を噛み締める。
「キョウってさ、強いよな」
「そりゃ、キョウよりはね」
「お前は俺だろ」
「俺は私だよ?」
「矛盾だぜ、そーゆーのを矛盾って言うんだぜ」
湖畔の街はそこにある、何時もと変わら無い、しかし俺は少しキョウに踏み込んだだけで街の様子が変わって見える、二人で築いた街だから当然か。
キョウの方を見るとニヤニヤしながら地面に寝転んでいる、その視線は俺に注がれている、人の悪い笑みだ、俺の好きな女はみんなこの笑い方をする。
グロリアもキョウも。
「な、何だよ」
「にひひ、私はキョウだよ、だからキョウを護ってる」
「知ってる」
「……でもね、キョウは私をちゃんとわかってるのかな、好きって事」
「知ってる」
「ううん、知らないね、グロリアがキョウを『好き』なのと同じ、自分自身でもね」
「………」
「早く気付いて」
睨まれた。
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