閑話187・『耳朶遊戯2』

キョウの膝の上で丸まりながら心の中でほくそ笑む、自分自身をどうにか『確認』しようとしているようだが無駄な事だ。


少し反抗的になったかなと思う、だけど今までが従順過ぎただけだ、私に対してもグロリアに対してもあまりに従順過ぎる……男の子なんだから少しは反抗しないとね。


成長しようとする姿勢は素晴らしい……だけど余計な知恵を覚えるのは煩わしい、砂嵐の原理を紐解こうとしてもその手前で処理される、大丈夫なはずだけど少し心配。


エルフライダーの生物としての特性だがその反面でキョウには知恵がある、人間としての機能も僅かながらにある、それを使って自分の謎を追及しようとしている、んふふ。


そりゃ、まあ………不安ではあるだろうねェ、そして最も気になっているのは『一部』の事だ、一部が一部である事に疑問は無い、しかしもしかして過去に他の一部があったのではと疑っている。


今の一部に疑問は感じない、現実として存在しているからね、でも過去の一部は覚えていない事で『疑問』を感じる事が出来る、失った事でエルフライダーの機能では処理出来ない事もある。


一部として認識されていないからねェ、困った困った、部下子やアクを思い出されたら困るのは私だ、キョウの心が壊れても私が大事に大事に育ててあげる、だけど問題はそこでは無い、そこじゃない。


部下子やアクに関しては今のグロリアのようにキョウは強く依存している、悔しいけど言い方を変えれば愛していると言っても良い、そんな二人の事を思い出させても楽しい事は無い、キョウは私だけを見てれば良い。


キョウはキョウだけを見てれば良いんだよ?一部だろうが愛していようが関係無いもん、俺が信じれるのは私だけ、キョウが信じれるのはキョウだけ、邪魔者が折角消えたのに……だから忘れたままが良いんだよォ。


「……キョウ、起きてるか?」


「寝てるよォ」


キョウの太ももはムチムチしている、頬でその感触を楽しみながら素早く答える、嫌味と受け取るだろうか?キョウは私に対しては素直に接するからね、変に背伸びしないキョウ、グロリアの時とは違う。


自分自身にだけしか見せない姿、くふふふ、少し笑ってしまう、キョウの細くて白い指が私の耳朶に触れる、ひんやりして一瞬だけ体が震えてしまう、そして愛でるように優しく動く、あふん、変な声出ちゃう。


「あふん」


「喘いだ、俺ってどうしてこんなに頭の調子がよろしくないんだろう……何も考えられねぇ」


「?……強制的に掻き消されるのなら諦めなよ、キョウを護る為の処置だからねェ」


「………耳朶の裏側の匂いを嗅ごう」


「おっ、生意気に逆らうつもりだねェ、嗅ぎたまえ、嗅ぎたまえ」


「は、恥ずかしくねぇのか……くんくん、お花の香りがする」


「ふはは、完璧美少女を舐めるな」


この返事にはキョウも美少女だよって意味が含まれているのに案の定不思議そうに首を傾げるキョウ、キョウを口説くのって大変だ、世の男性は苦労するねェ、グロリアはそこら辺は上手だ、ムカつくほどに。


少し恥ずかしくなって丸まる、体の面積を縮めた所で無駄なのだけれどキョウと同じで癖なのだ、んーーー、欠伸を噛み殺しながらキョウの様子を観察する、難しいねェ、難しい……この子を私だけのものにしたいだけなのに。


簡単で単純な欲望なのに、見上げるとキョウが鋭い視線で私を見下ろしている、私と同じで欲を抱えた怪しい瞳。


「何だか男の子の顔してるね、キョウ」


「何時もキョウに鍛えられてるからな」


「そーゆー感じじゃないかな?………もっとこう、私を疑う様な、ふふ」


「―――怒れば?」


「怒らないよ、好きな子が何時までも反抗的で嬉しいの、キョウは女心がわかってないね、くふふ」


「う」


私を出し抜こうなんて可愛い事を考える。


無駄だよ。

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