第360話・『跨りたいのよ、エルフとドラゴン』
幾つもの手続きをして辿り着いたのは小さな島だった、あの危なっかしい橋を渡って辿り着いたのだが中々に大変だった。
遠目に見た通り危険な橋だったぜ、魔法で加工している箇所も最小限であちこち傷んでいた、そこまで『自然』にこだわる理由がわからん。
自然よりも安全が第一だと思うぜ、涼しい顔をして横を歩くグロリア、俺にドラゴンを見せる為に色々とご苦労様と心の中で呟く、そのドラゴンはこの島の固有種らしい。
だったらそれはもう大切に扱われているだろうと予測出来る、だって自然大好きだもんなァ、この街の人間はよォ、何処か小馬鹿にしながらほくそ笑む、どうしてだろう。
全ての島の中心に位置する小さな小さな島……………まるで周囲の島に守られているようだ、何だか荒らしたいなと思う、何だか壊したいなとも思う、その衝動を抑える、抑えなきゃな。
「小さな島だなァ」
「そわそわして落ち着きが無いのが心配です」
「人が大切にしてるものって壊したくなるよなァ、そんだけ」
「……ドラゴン、見せませんよ」
「嘘だぜっ!」
「返事だけは相変わらず良いですねェ」
呆れたように溜息を吐き出すグロリア、この島にはどんなドラゴンがいるのだろうか、むふー、跨ぎたいぜ。
そもそもエルフを跨ぎたいってのは衝動である生物的な生理現象だ、俺が人間として欲しているのはそうでは無い、人間だから夢を見る。
ドラゴンに跨りたいっ。
「跨りてぇ」
「こっちですよ……卑猥ですねェ、えいえい」
「いたっ、違うぜ、変な意味では無くてさ、将来の夢はドラゴンライダーだからさ」
「ありましたね、そんな設定」
「設定!?」
「ああ、夢でしたねェ、生意気な夢、貴方はもうそんな夢を見れる肉体じゃないのに」
バカにするわけでも無く淡々と告げられると余計にやる気が溢れて来る、エルフライダーって生き物がドラゴンライダーになってもいいじゃん。
もしそれが叶わないのならドラゴンの首根っこを跳ねてエルフの頭部を移植すれば良い、ドラゴンの割合が多いからドラゴンだよなァ、ほら、簡単な事じゃん。
縫ったり貼ったりするのは得意だよ。
「くふふふ」
「何がおかしいのですか?」
「オリジナルのドラゴンを生み出して跨りたいっ」
「何とまあ……恐ろしいことを口にするのですね」
「グロリアが俺を『改造』したのと一緒だよ」
一瞬、何かに罅が入るような音がした。
きっと気のせいだ。
「グロリアは俺を自分の玩具にしたもんな」
「ええ」
否定はしないのか。
嬉しいな。
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