閑話184・『顎砕けての愛かませ』
湖畔の街はキョウや私の感情で色合いや世界観を変化させる、私やキョウって言っても同一人物だからねェ。
今日は小雨が降り注いでいて何とも言えない肌寒さがある、理由としては簡単で、グロリアが一日お仕事で相手してくれなかったからだ。
猫のように丸まって縁側で眠っている………寒そうだなと思って近づいたら威嚇された、まあ、本人がそれで良いっていうのなら別に良いけどさ。
気に食わないのはこの雨模様がグロリアに再会すればすぐに晴れ空へと変化する事だ、キョウがグロリアに依存している事に納得が出来無い、認めたくは無い。
「雨だねェ」
「うるせぇ、あほんだら」
「んふふ、口が悪いねェ、女一人に相手されないだけで寝込むだけの事はあるねェ、情けない」
「…………」
「カッコ悪いのォ」
丸まったまま私の言葉を聞き流すキョウ、近寄って太ももを愛でるように撫でる、何度も何度も擦れば甘い声が聞けるのかなと思った刹那に顔面に向かって蹴りをかまされる、兆候はあったので軽々と避ける。
キョウの足裏は皺が無く真っ白で血管が透けて見える、そんなので地面を踏み締めて大丈夫なのと問いたくなるような美しさがある、引き寄せられるようにして足裏を舌で舐める、曲がった体勢のままキョウが喘ぐ。
そして顎裏を思いっきり蹴飛ばされる、意識が一瞬飛ぶ、鞭のようにしなるキョウの足の軌道は美しい、機能美に溢れている、あはははは、猫科の動物を思わせるしなやかな動きに改めて惚れ直す、これ、この子、私のォ。
口内が切れたらしく血の味がじんわりと、んふふ、血の味もキョウと同じ、同じ肉体だものねェ、しあわせしあわせ、傷付けられてもそれを実感出来るから幸せェ、んふふふふふふふふ。
「楽しいね、キョウ」
「口から血を垂れ流しながら何を言ってるんだお前っ」
「蹴ってくれてありがとぉ」
「…………顎だから蹴ったら足が痛い」
「ごめんねェ、私のせいでキョウを傷付けて、舐めるから……」
「早くしろよ、カス」
「んふふ」
相手をしてくれる、私を見てくれる、ああ、この一瞬は『私』だけのキョウになってくれる、それが嬉しい、グロリアからキョウを取り上げる実感を堪能する。
それで口の中が切れようが私自身がどうなろうが知った事では無い、キョウが相手をしてくれるのならばこの肉体がどうなっても良いのだ……問題はそこでは無いのだ。
「足裏舐められるとくすぐったいけど平気かなァ」
「血、何時まで垂れ流してんだ」
「顎砕けちゃったかもォ」
「ちゃんと喋れてるから大丈夫だって………くすぐったい、あはは」
キョウの足裏を舐めると楽しそうに笑う、鋭く伸ばした下でツルツルの足裏を虐めるようにして舐める、お腹を抱えて笑い転げる姿が実に愛らしい。
これも私の、あれも私の、それも私の、ぜんぶわたしの、お酒を飲んだ時みたいに異様に膨れ上がる感情、何処までも何処までも私を狂わせておかしくさせる。
おいしい、キョウは何処も甘くておいしい、この味は、渡せない、だれにも。
「うひゃははははははは、や、やめれ」
「顎砕かないとずっと舐めるよォ」
顎が砕けても平気だよ、何処か壊れても大丈夫。
キョウがそこにいるなら大丈夫。
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