閑話182・『代替え代替え代替えのうそ』
お尻を叩いてもキョウはあんあん喘ぐだけで結局『慣れて』しまった。
甘くて甲高い声を聞いてるとこっちもおかしな気分になるし、この教育方法はもう使え無いようだ。
躾、キョウを躾ける事が出来るのは私かグロリアぐらいだ、一部ではキョウに逆らう気すら無い、キクタは出来そうだけどやる気が無い。
そもそもキクタはキョウが嫌がることを徹底的に排除する、そしてキョウが喜ぶことを徹底的に追及する、一部らしい一部と言えば良いのか?
そもそもの基本がキクタや部下子や悪蛙なのだとすれば、それを模倣して一部が従順になるのは当然だろう、やはりキョウから派生した自分しかいない。
キョウが庭でピョンピョン飛び跳ねているのを見て溜息を吐き出す、どうしたものやら、さらにその性に対して自由極まる姿勢が一部を狂わせる、麒麟のように。
あれを取り込んだ時は怒った、しかしその反面で従順で強力でお母様に対する切り札になるかもと期待した、期待はあっさりと裏切られた、麒麟がかつての私のような存在になった。
「麒麟が反抗的になったのも全部キョウのせいなんだからねェ」
「性なんだから?」
「おふ、言うねェ」
「……に、睨むなよ、湖畔の街にも蝶々がいるんだな、追い掛けてたら疲れたぜ」
「動物かっ」
汗を拭いながらぽすんと私の横に座るキョウ、ニコニコと笑いながら伸びをしている姿は無邪気そのもので麒麟を惑わせたあのキョウとは思えない、二面性があるわけでは無く遊びにも性にも自由なだけ。
縛られる事を何よりも嫌う、その癖に一つのモノに固執して傷付く事が多い、部下子に対して親離れ出来ていないのもソレが原因だ、遠い昔に失ったものを今でも何処かで求めている、グロリアは代替品なのだろうか。
記憶を失ったキョウに問い掛ける事は出来無い。
「遊んだー、疲れたー」
「夢の中でぐらいゆっくりすれば良いのに」
「膝枕っっ」
「はいはい、温めておきましたよ」
「ど、どうやって」
「走り回るキョウの下着を見て」
「ひぃ、い、言えよ…………まあ、キョウだしいいか、うへへ」
「おいでよ」
ぽすんと自分の太ももの上に頭を重ねるキョウ、小さな頭、紅潮した頬と潤んだ瞳が見る者の獣欲を刺激する、しかし私はキョウなので効果ありません、残念だね。
永遠の夏に支配された世界、ここには私とキョウしかいない、他人を支配して惑わせる性質のエルフライダー、その対象を私に向けるしか無い……だけど結局二人は一つ、二人ともエルフライダー。
キョウの甘い吐息は私の心を侵さない、同じだからね。
「こうやって、誰かとゆっくり過ごせるのって、嬉しいぜ」
「そう」
「みんなすぐに……おかしくなって、おかしい事が正しくなって、俺も忘れちゃうからさ」
「そう」
「キョウだけ、俺に普通に接してくれるの」
「そう」
「キョウは、そんな俺、めんどくさい?」
「めんどくさくは無いけど汗臭いかな?お風呂に行こうか」
「!?そ、そうか……くんくん、うぁぁ」
そうだねェ、私だけがキョウの傷を癒せるのならそれはとても光栄な事だよ。
代替品のグロリアには出来無い事だからね。
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