閑話181・『お尻を叩いて加工中』

麒麟がグイグイ来る件について説教される、あまり一部を惑わせて遊んで壊して再生するのは駄目とか、そんなに色々したかなと頭を抱える。


隙あらば唇を奪おうとするし体を擦り付けて来る聖獣に俺は何も思わないし、暇つぶしに体を重ねるのも良いじゃんと思うけどキョウはそれが嫌らしい。


誇り高く生真面目に任務を遂行していた麒麟が俺しか見えなくなって落ちぶれている様は中々に愉快で爽快なのにどうしてそれが嫌なんだろうか、あれはあれで『成功』だろう、性行もしたし。


ふふん、しかしキョウにお尻を叩かれている現状から現実逃避するには些かリアル過ぎる内容でやはり意識はお尻にっっっ、ぺちんぺちんぺちん、灰色狐の細胞を活発化させて尾でお尻をガードする作戦だったが失敗した。


一度叩かれると尾がビーンと天を目指すかのように上向きになる、それから連続して叩かれると尾は垂れ下がる事無くずっと上向きのままだ、うああああああああ、うあああああああああああ。


「うああああああああ」


「心の中の声と現実の声が一致しているのって素敵だよねェ、そぉれ」


「やめろぉお、お尻が赤くなっちゃうぜ、お猿さんみたいになるぜ」


「なれば良いじゃん……誰彼構わず色目を使ってさァ、こうやって肉体に直接叩き込んだ方が躾になるよねェ」


初雪のような透明な肌に僅かに朱が差し込んでいるがそれは性的興奮によるものでは無い、キョウは真面目に怒っている、そして叱っている、故に性的な事柄に持ち込んであんあん喘いで有耶無耶にすることも不可能。


青い空の下でケツをぺろーんと差し出してぺチぺチ叩かれるのは屈辱でしか無い、麒麟が勝手に俺に尻を振ってるだけでそもそも俺が悪いのか?そして肉体に直接とか言ってるけど湖畔の街は精神世界だしなっ!理不尽っ。


「ま、待てキョウ、俺の性的アピールが乏しい尻朶の薄いケツを叩いても楽しくねぇだろ?は、話をしよう」


「くふふ、一杯叩いて安産型にしてやんよォ」


「ひぃ、うぉおおおお、やめろ、お前っっ、そもそも俺は悪く無いぜっ、麒麟が勝手にヘコヘコ腰振ってるだけだろ!」


「えい」


ぺちーん、青い空に小気味良い音が木霊する、あまりに激痛に舌を噛んでしまう、何も言えずにジタバタ暴れるが完全に肉体の自由を奪われている、キョウの方が一枚も二枚も体術に置いては上手だ。


どうしようも無い絶望感を覚えながらも逃げる機会を探る、しかし邪笑を浮かべたキョウはかつてのグロリアを彷彿とさせる瘴気を垂れ流している、左右の違う色合いの瞳が何処までも何処までも細められる。


「キョウのお尻は叩きやすい良いお尻だね、癖になっちゃう」


「糞も出ちゃうぜ?」


「やってみなよ」


「キョウっ、俺は糞も出ると言ってるんだぜ?!」


「下品な言葉で相手を戸惑わせるのはキョウの十八番だからねェ、否定するよりも促してあげようと思うんだ」


「十八番つーか十八禁だぜっ!?」


「大丈夫、どんな姿でもキョウを愛せる自信があるからねェ」


白魚のような指が怪しく蠢き鞭のように腕がしなる、激痛に耐えながら涙目でキョウを見上げる、ふふんと怪しく笑う、俺のお尻を叩くのが楽しくて楽しくてどうしようもないって表情だ。


同じキョウなのにどうして俺だけこんな目にっ、産毛すら見当たら無い人工生物の陶器のような腕が何度も何度も俺のお尻に打ち付けられる、くそ、変に下らない会話を挟んだせいかそれっぽいプレイにも持ち込めない。


そしたらアンアン喘いで全てを白紙に出来たのにっ。


「いてぇ、いてぇ」


「安産型にしないとねェ」


「あ、あんあん」


「?」


「こ、こうなったら安産型になって麒麟の赤ちゃん産むっ、キョウの赤ちゃんは産んであげないっ」


「へぇ、私が一番苛立つことを良く見付けられたねェ、偉いねェ」


最後にキョウを悔しがらせる事が出来て良かったぜ……お仕置きは数時間続いた。


い、何時か同じ目にあわせてやるっ。

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