閑話179・『お尻が痒いので肉を抉る』
この世界は俺とキョウの精神で構成されている、永遠に終わらない夏、永遠に曇らない青空、永遠に枯渇しない泉。
そんな世界で微睡みながら欠伸を噛み殺す、ぎろりっ、キョウが鋭く睨むが無視をする、無視をするつーか無視を決め込む。
最近の俺の態度がだらしないだとか、所作に品が無いとか、グロリアが注意しないようなことを何度も説教して来る、チラチラ、睨んでる。
一面に広がるオリーブ畑を見下ろしながらゴロゴロ、服に枯れ葉が纏わり付くが気にしない、しかしキョウは気にしているようで無言で睨んで来る。
こわいこわい、グロリアは俺の行動を抑制しないけどキョウは割とそーゆー所がある、俺の未来を案じて色んな事を教えてくれる、ありがたいんだけどな。
グロリアの場合は俺がどのような『俺』になっても自分が支えるからと何も行動を縛ったりしない、それはそれで寂しい様な気がする、舌打ちが聞こえたのでキョウを見詰める。
お尻をボリボリ掻きながら……かゆい。
「何さ」
「………」
「何なのさ」
「……………」
「何何なのさ」
答えてはくれないが無言の圧力は強くなる、自分と全く同じ顔だけどこうやって無表情だと何だか怖い、ぼりぼり、虫に刺されたかな、エッチな虫め、ぼりぼりぼりぼりぼり。
俺の柔らかくて愛らしいお尻を刺すとは、くふふふ。
「……おらぁ」
「ぐぇ」
問答無用で背中を踏まれて踵でグリグリされる、角度的にキョウのパンツが見えないっっ、つー事は痛いだけで何のお得感も無いっ、しかしも容赦無く踏み付けて来るので呼吸もままならんっ。
何とか魔物の細胞を活性化させて足を振り払う、げほっ、唾液をまき散らしながら呼吸を整える、キョウを見上げる、まだ子供と言っても良い年齢なのに妙な色気がある、胸の幅の肩から肩までの外側で着る独特の修道服は一切の穢れの無い純白、グロリアと同じ修道服。
純白なのに中身が真っ黒なのもグロリアと同じだ。
「殺す気かっ!?ぼりぼり」
「取り敢えずお尻を掻くのを止めないと殺すよ」
「うっ」
「殺すよ?」
「ど、どうしてお尻を掻くだけでこんな扱いされないと駄目なんだぜ!?」
「不快だから」
「うぅ」
「不潔だから」
「うぅぅ………ぼりぼり」
「おらぁ」
「ぐぇぇ」
瞳の色は右は黒色だがその奥に黄金の螺旋が幾重にも描かれている、黄金と漆黒、左だけが青と緑の半々に溶け合ったトルマリンを思わせる色彩をしている、それが俺を見下している。
理不尽っ。
「ぐぇぇ、ぼりぼりぼり」
「チッ」
「ふふん、お尻が痒いから掻いてるだけだぜ、何も悪く無いもんっ」
「そうか……お尻が悪いんだねェ」
ニコリと微笑んだキョウに一瞬目を閉じて身構えてしまうが何も痛く無い、そしてお尻がすーすーする。
ん?
「お尻ぺんぺんしようねェ、ふふ、可愛いお尻」
「ぎゃああああああああああああ、や、やめろぉおおおおおお」
「そぉれ、ぺんぺん」
ペンペンじゃなくてバシバシだった。
もう痒く無い……何も感じない。
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