閑話177・『値札には∞円』
キョウが望むモノが新しい肉体なのは何となくわかる、俺のガキを孕みたい、俺と結ばれたい、結論から言えば現時点で結ばれている。
俺とキョウは同じ存在だ、同じ精神が生理的な反応で切り替わるだけで一人でしか無い、それなのに結ばれたい、俺はどんな思考をしているのだろうか?
肩で風を切りながら伸びをする、周囲の視線はそのままにグロリアに言われた買い物を済ます、つまりは保存食、グロリアのお腹は常にくーくー鳴っている……厄介だ。
シスターである時点で周囲の視線は当たり前なモノだし俺も当たり前のモノとして受け止める、だけど心の中では少し不安もある、周囲に注目されるのはあまり得意では無い。
キョウに切り替わりたいのだが拒絶されるので溜息、グロリアの為に買い出しをしているのだ、キョウが断る理由としてはそれだけで十分なのはわかっているが自分自身としては納得出来無い。
俺はグロリアを嫌っている?そんなわけが無い、しかしキョウと俺の明確な違いがあるのだとすればそこだ、どうしてキョウがグロリアを嫌うのだろう、俺自身なのにおかしな話だ、ホントにホントにおかしいよねェ、くふふ。
眩暈がする、何かが、スイッチが入ったような、おぇ、軽く吐きそうになる、周囲の視線なんて気にし無いで体をくの字にして、あれ、おかしいよォ。
「あれ、私どうしたんだっけ」
『キョウ、どうしたんだぜ』
わたしはおれだったような、おれはわたしだったような、奇妙な感覚、灰色の街はその色合いを持って私の心境も染めようとする、おれ、わたし、あ、あ、え、どっちだったっけ、くふふ、んふふ、キョウの声に心が軽くなる。
しかしこの荷物の量は無いよねェ、あいつも、グロリアも手伝えば良いのに……上手に使われちゃってさ、あいつも仕事が忙しいのはわかるけどちゃんとキョウを女の子扱いしないとさァ、私だけの『女の子』でもいいんだけどねェ。
「あの、シスター」
話し掛けて来る男の『言語』が聞き取れない………それは興味が無いからだ、私は『俺』の声だけを聞ければ良い、適当にあしらって重い荷物を持ち上げて再度歩き出す、荷物持ちに使えたかな?でもそんな所をグロリアに見られたらキョウが何をされるか。
『あれ、わたし、お、れ、俺が体動かしていなかった?違った?』
「別にいいじゃん、私だろうは俺だろうがキョウはキョウだもん」
『そうかな、そうかもな、つーか荷物重いだろ?代わるぜ、ん?変わるぜ』
「どっちでもいいよ、キョウにこんな重い荷物持たせたく無いからこのままだよォ」
『ちゃらららん』
「な、何の音ォ?」
『好感度が上がった音だぜ』
「………どうしよう、私のキョウが安い女で辛い」
『え!?』
好感度そんなので稼げるのならグロリアだったら……あの腹黒い女だったら、ぶるるる、体を震わせる、寒気がする、無知で無垢なキョウは可愛いけどそれが誰かに利用されるのはあってはならない。
ここ最近では麒麟が良い感じに『仕上がっている』ので多少は権限を与えてやっても良い、あの子ならグロリアと対抗できる能力を持っているはず、だけどねェ、あの子もキョウ寄りで私の命令をあまり受け付けない。
炎水とかは容易く支配出来るのにキョウ寄りの一部はねェ、初期メンバーなんてキョウの命令にしか従わない傾向がある、別に嫌われてるわけじゃない、愛されてはいる、しかし優先される順位がキョウより低いだけ。
『俺は安くねぇぜ、高いぜ!』
「その台詞がもうね、悲しくなるぐらいおバカだよォ」
『何で?!』
「知性のある女性は自分自身に値札何て貼らないよ、んふふ、いつでも『時価』で勝負するんだよォ」
『あ、そこ段差』
「わっ、ありがとォ、優しいねェ」
『時価の女だからなっ』
どうしよう、もっと安っぽくなったよォ……しかし最近、キョウと私の切り替えが不確かなような気がする。
少し、違和感を感じた。
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