第345話・『過保護地獄』
相手に関係を色々と求められた事はあるが流石にコレは初めてだ、後日連絡すると伝えて脱走した。
エルフライダーの能力の余韻から完全に覚醒した後はあまりの恥ずかしさにベッドの上で丸まって唸る、後日って何時までだろ?
あのロリ魔物使いは恥ずかしそうにモジモジしながら待っていると言っていた、彼氏彼女の関係になるよりもよっぽど難しい、友達って何だっけ?
しかし餌にするはずだったのに直球で友達になって下さいと言われて狼狽える、餌が餌では無くなる瞬間をそこで初めて見た、餌って友達にもなれるんだな。
つー事は友達も餌になれるのかなあ?友達がいた経験がほぼ皆無なので何だかそこん所がわからない、机で書類に目を通しながら何かを書き込んでいるグロリア。
グロリアは駄目だな、本当の友達っていなさそう、利用出来る相手を友達って呼んでいるような女だぜぇ、相談してもきっと無駄だろうと諦める、じーっ、視線を向ける。
「グロリアって友達いるの?」
「んー、少し待って下さい、もう少しで書き終えるので」
美しい少女は美しい声で答える、全てが完璧で全てが完全なグロリアにだって欠けている部分はあるだろう、人情とか、俺以外の人間に対する優しさとかさ。
愛されている実感はあるけれど、やっぱりグロリアもグロリアで色々とダメダメなんだなと思う、付き合うようになって初めて気付いた事だ、昔はグロリアに欠点なんて無いと思ってた、胸以外。
「おや、天啓が―――」
「し、仕事に集中しなよ、きっと勘違いだって」
「何だか腹立たしい天啓のように思えましたが、おかしいですね」
恐ろしい程に勘が鋭いグロリアに内心で怯える、真っ直ぐに伸びた背中は彼女の性格を現すように一切の歪みが無い、俺は猫背になりがちなので憧れる。
ねえねえと何度か問い掛けるが無視をされる、無視をされているつーか作業に集中しているので聞き流している、彼女の扱いを間違えたら怖いんだぜ?気配を消して背後から近付く。
そしてそのまま背中から抱き付く、むにゅ、これは決してグロリアの胸の擬音では無い、俺の胸の擬音である、グロリアの背中に胸を当ててしまった、襲われる??いやいや、大丈夫、作業中だしな。
「何ですか?………この状況」
「らっきーすけべ」
「どちらがでしょうか?ほら、抱き付かない、筆先が歪んだらどうなる事か」
「どうなるんだ?」
「キョウさんの額に突き刺します」
「こんなに可愛いオデコを粗末に扱うんじゃねーぜ、いいよ、離れるよー、もうだきついてやんなーい」
「生意気ですね、作業が終わるまで待ってて下さい、後で遊んであげますから」
遊んであげますから、子供扱いのその言葉に少しだけ寂しさを覚える、何時になったら追い付けるのだろうか?俺が下唇を噛み締めながらベッドに戻ろうとする姿が気になったのかグロリアが手招きをする。
ちらちら、顔色を窺いながら近付く。
「少し、粗雑に扱い過ぎましたね、近過ぎる関係も時には事を拗らせる……ごめんなさい」
「ぐろ、りあ」
「何か聞きたい事があるのでしょう、どうしました?」
「………と、友達になろうと言われたんだ、女の子に」
「………」
「グロリアはそんな経験が――――」
「駄目ですよ」
白い蛇が伸びて来る、白い腕が、俺に絡み付く。
蛙の俺に絡み付く。
「お仕事はここまでです、さあ、一緒に遊びましょう」
「と、もだちが」
「遊びましょうね」
グロリア、俺の言葉を全て聞き流して薄く薄く微笑む。
笑みと認識出来無い程に、うすくうすく。
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