第342話・『鼻血ライダー♪』

おいしそ、目の前の幼女からは素敵な匂いがする、良質な餌の匂いだ、エルフの要素は皆無か?じじっじっ、微かに耳が尖っているのを見逃さない。


ハーフエルフでは無い、より純度が低い、こいつ、先祖にエルフがいるな、本人も自覚しているのかどうかわからない情報を引き出す、エルフは全て俺に尽くす為の存在。


なのにこいつが俺に尽くしていないのはおかしいよな??どうしてなんだろう、脳味噌の具合が正常では無いのだろうか、だったら正常にしてやろうか、耳から指を突っ込んで軽く回せば良い。


小首を傾げながら近付こうとすると足元が何かに固定されているような感覚、んー、地面に見知らぬ色合いをしたスライムがいる、それが俺の足首を地面に固定している、しかも鋼の硬度で、しかも奇妙な収縮性で。


「?いじわる?」


「あら、人間の技術で改造したスライムかしら、接近に気付かなかったわね」


「いじわる?」


「まあ、目の前の敵に集中し過ぎたのが仇となったわね、そうよね、魔物使いだから物珍しい魔物を使役するのは当たり前よね」


「いじわるするひと?」


「落ち着きなさい、取り敢えず、貴方を捕獲したいって事よ」


「エルフ、えるふごときが、えるふらいだーを」


「落ち着け」


殺気が膨らむ、エルフでも無い、エルフの混ざり物がエルフを支配する立場にあるエルフライダーを捕獲する?その言葉の違和感に心がざわざわする、目の前の幼女は美味しそうなのにどうしてそんな意地悪をするのだろうか。


意地悪をするのは嫌いだ、意地悪をされるのも嫌いだ、でもキョウやグロリアに意地悪されるのは大好き、こいつに意地悪されるのは大嫌い、あれあれあれあれあれれれ、意味がわからない、意味がわからなくなって混乱してしまう。


「エルフ混ざってるのに、おかしいの」


「よろしくね、新種の魔物さん、そうだね、シスターと高位の魔物のキメラとは興味深いね」


「お母さん、言われてるよ」


「あら、キョウの事じゃないかしら」


「?エルフが俺の事を語るの?エルフ如きが俺の事を語るわけないよね」


「混ざり物って言う割には気にするのね、う、器が小さい、あ、アタシのダメな所が遺伝しちゃったかも」


どうなんだろう、でもエルフが俺に馴れ馴れしいのは何だかイライラする、顎に手を当ててジーッと俺を観察する魔物使い、珊瑚珠色(さんごしゅいろ)の瞳がゆっくりと細められる、お、お母さんが視線で穢される?


足が固定されているので背中を向ける事が出来無い、どうしようどうしよう、どうしてこんなに頭が悪いんだろう、何時もならちゃんと出来るのに、何時もならちゃんと隠せるのに、ワンちゃんのように大切なモノを隠せるのに。


どうして今は出来無いのだろう、お母さんを見ると優しく笑うだけで何も教えてくれない、すぱるた、きびしい、ううううううううううううううううううううう、下唇を噛み締めながら必死で考える、だけど答えは出ない、ぷすぷすぷす、あたまいたいよぉ。


「ひっく」


「そこの魔物使い、アタシの娘を泣かせないでよね、ほら、ちーん」


「じゅびびびびび」


「お、思った以上に量が……このハンカチは捨てるしかないわね」


「―――――魔物としての物珍しさよりも奇怪な行動が目立つね、何だね、君たちは」


「親子よ」


じゅびびびびびびびび、ふぐふぐ。


あう、鼻血出た。


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