第335話・『親子の休日は初めて?実はうれしい』
飼育される動物を見るのは嫌いでは無い、飼育される魔物を見るのも同様だ。
俺とツツミノクサカは目立つらしく周囲の視線を集めている、だけどそれを気にしていたら何も楽しめない。
何故かいきなりハートマーク乱舞し始めた母に呆れながらもソレに付き合う、体重も軽いので腕に抱えるのに負担も無い。
シスターが子供をあやすのは普通の光景だろ?だからみんな無視をして買い物を楽しんでくれ、園の中は思った以上に広く様々な魔物が展示されている。
奥に行けば行くほどに大型になり値段も上がる、成程、しかし俺の腕の中で人間のふりをしている魔物は小さいぞ?人型の魔物がいる事をここにいる人達は知らないのだろう。
「しかしここの魔物は人間を襲う気配が無いな、檻の中からでも手を伸ばしてくるイメージなのに」
「調教されてるわね」
「もう一度言ってくれ」
「ち、調教されてるわね」
「もう一度言ってくれ」
「しつこいと彼女に嫌われるわよ」
「はぁああああ?!俺がグロリアに嫌われるなんてあり得ないんですけどぉおおお!グロリアだったら既に俺を殴って会話を打ち切っているんだけどおおおお」
「お、お付き合いは認めているけどそれは問題ね」
全身を震わせながら想像する、グロリアの躾は主に言葉と拳、前者が無駄だとわかれば即座に後者のソレで処置をする、今まで何回ぶん殴られただろうか?ふふふふふ。
しかしグロリアの細くて美しい腕が真っ直ぐな軌道を描きながら飛んで来るのは見ていて飽きない、見ていて飽きないのだが顔面にいずれ叩き込まれるので見れなくなる。
頬を擦りながら魔物達を観察する、魔物たちが飽きないように沢山の自然や遊具で囲まれている環境は中々に素晴らしい、かなり奥の方まで来たので魔物も大型になっているが不思議と怖く無い。
人間に調教されているからか?違う、どの魔物も俺達が通り過ぎると怯えたような瞳で奥に隠れようとする、最初は何なのかと疑問に思ったが成程、ツツミノクサカの正体に気付いているのか?
檻が無い場所もあって少し驚くが水路や木々を使って上手に人間との距離を取れるようにしている、ブヨブヨに膨らんだ巨大な蛙が土の中に埋もれながらこちらを見ている、人間も丸呑み出来そうな巨大さだ。
「蛙だ、デカッ」
「あの魔物には満腹中枢が無いから幾らでも人間を捕食出来るようになっているわ、ふふ、キョウみたいね」
「いや、お前の指でお腹一杯で吐きそうだぜ」
「吐いたらぶん殴るわよっ!せ、折角痛い思いをして頑張ったんだからっ!」
「後半だけもう一度言ってくれ」
「へ?」
「もう一度言ってくれ」
「せ、折角痛い思いをして頑張ったんだから?」
「ふぅ…………いい加減にしろよっ!俺は怒るぜ!」
「なんでっ?!」
我が母親ながら困る人だぜ、ふふふふふふふ、今の言葉を何度も脳裏で再生しながらゆっくり歩く、ツツミノクサカが傍にいるだけで全ての魔物が怯えてしまう。
スライムに反応が無かったのはあまりに下位過ぎるから?
「しかしここまで魔物って調教出来るんだなァ………ツツミノクサカも調教したけど生意気だし」
「調教つーよりは調理でしょう、アレ、さ、捌くとか!このこの!」
「か、顔は止めろ、こんなに可愛い顔を殴るなんて酷いぜ」
「大丈夫よ、死に顔だってきっと可愛いわ」
「や、やめてくれ」
冗談っぽく無いぜ、ツツミノクサカが落ちないようにバランスを保ちながら欠伸をする。
お、親子の休日って感じで悪く無いぜ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます