第325話・『証は肉ごと根こそぎ奪え!』

許しを請うても許されず、行為は延々と続いた。


声が枯れて喉が枯れて唾液が枯渇すると同時にグロリアの唾液を与えられる。


喉を潤す術はそれしか無く、淫欲に狂ったシスターの玩具にされる、その癖に何度も何度も執拗に『愛している』と真面目な顔で言われる。


脳味噌がトロトロになるのがわかるから、わかるからこそ怖くなってベッドから逃げ出そうとするのに腕に固定された布キレを掴まれてベッドに引きずり込まれる。


何時もは完璧なグロリアが欠けている、俺が欠けている、グロリアの中から欠けている俺を奪い去るように行為に励む、もういたい、いたい、やだ、やだ、やだって言ってるのに。


どうしてグロリアの方が泣きそうな顔をしているのだろう、見上げる、親に捨てられた子供のような表情、その表情に胸が痛くなる、どうしてどうして、どうしてなのグロリア。


俺がグロリアを捨てる事は絶対に無くて、グロリアが俺を捨てる事はもしかしたらあるかもしれない、そんな二人の関係は二人が一番わかっているはずなのに、グロリア『は』捨てられる事は無いのに。


泣いていないのが逆に悲しい、泣けないグロリア、その姿を見ていると目の奥が痛くなる、どうしてこの人は泣く事が出来無いんだろう?……泣く事が出来無いグロリア、お、おれに、俺に異様なまでに固執するグロリア。


出会った頃を思い出す………冷たい言葉で俺を拒絶して冷たい視線で俺を見下していた、外の世界を何も知らない俺に色々と教えてくれた、自分の野望を叶える為の駒として躾けてくれた、でも今は違う、そんな過去を払拭する程にっ。


もう汗の匂いは気にならない、全身がグロリアの匂いに満たされているから、甘くて、気品に溢れていて、高貴とさえ思う様なグロリアの匂い、それに包まれながらも泣きそうな顔をしているグロリアを見上げる、愛していると怨念のように。


愛はそのような苦しい表情で囁くものでは無い、だけど他者を支配して他者を駒にする事でしか他者と繋がれないグロリアにはこれが精一杯の事なのだ、わかっている、わかっているのに安心してくれない、俺の体を貪り尽す。


もしかしたらそれは違うのか……俺がグロリアを貪っている、関係性は反転している?いつの間にか、いつの間にか、あれ、腕の布キレが、ない、あれ、あ、わからない、見上げていたはずなのに見下している、グロリアに跨って、おれ。


「いい加減にしなよ、グロリア」


「あ」


「そうやって泣きそうな顔で、泣けない癖に、俺を求めて―――可哀想な女だぜ」


「て、ないで」


「?」


「捨て無いで、下さい、キョウさん」


「おれが、すてられる、がわだろ」


それから先は良く覚えていない、しかし、グロリアの体は柔らかくて気持ちいい、どうしてだろう………グロリアの表情と弱々しい声を聞いて、一気に、おかしくなった、おれがおれでなくなるような。


おれは、おれは、俺は、グロリアの体に唇で証を刻む、命じる、麒麟の刻んだ印の上から印をさらに刻めと、ははっ、キスするかと思ったら噛みつかれた、肉が裂ける、おれの、にく、エルフライダーの能力で勝手に修復が始める。


まさか印を肉ごと奪うとはな、でもこれで大丈夫、血が溢れる、ベッドに血の華が広がる、グロリアの愛情は重いな、重すぎる、普通の人間だったら死んじまうぜ、グロリアを見ると童女のような表情で微笑んでいる。


無垢な笑顔。


俺だけの笑顔。


「はぁ、嫉妬するのも、これで終わりで良いだろ?ごめん、俺が悪かった」


「ふふ、そうです、悪いのは私ではありません、キョウさんです」


「止血してくれよ」


「どうせ治るでしょう、それとも直るでしょう?」


「どっちでも良いぜ、頭くらくらする、グロリアのおっぱいに沈んで寝る!」


「――――――沈む程ありませんけど」


「今のは俺は悪くねぇだろ?!」


グロリア、ごめんな、麒麟の奴め――――俺達を弄ぶように誘導しやがって。


グロリアの頬にキスをしながら笑う、でもイチャイチャ出来たから良いや、シーツは取り換えて貰わないとな?ち、血だらけだし。


「本当だぜ、沈む程に胸はねぇ」


「ぶっ殺しますよ」


「だから俺の胸に顔を埋めとけ、沈むぐらいはあるだろ」


むにゅ。


「い、何時の間にこれ程の成長をっ」


「何時も見とけよ」


浮気しないようにな。

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