第322話・『キスマークはやめとけ、戦争になるぞ、焼け野原さ』
嫉妬しているであろうグロリアを見ていると昨日の夜の麒麟を思い出す。
最後の夜だ、グロリアと旅をしているのだから麒麟と体を重ねる機会は少ない……なのでこれでもかと楽しんだ。
自分が愛されて恋されているのを自覚しながらする行為はとても楽しい、好意と行為が交わって感じ過ぎてしまう。
誰も使っていない山小屋で交わりながらグロリアの事を考えているとその思考を邪魔するように麒麟の小さな指が蠢く。
俺の体は俺の意思を無視するように弓なりになって大きく震える、今宵の三日月のようにさらにさらに弓なりになる、青白い肌に青白い月の光が差し込む。
麒麟は自分が感じる事を放棄して俺に尽くしてくれる、俺の大きな喘ぎ声が闇夜に響き渡る、鳥の鳴き声よりも虫の音よりも高く高く、恥ずかしい、とても恥ずかしい。
うーー、涎を手の甲で拭いながら麒麟を睨む、しかしその表情が思いの外に必死で真っ赤になっているのを見て満足してしまう、作業的に事を済ませていると思ったら可愛い奴。
天上ではこのような行為をした事は無いらしい、だから麒麟を一から躾けたのは俺だ、俺が感じるように、俺だけが感じるように何度も何度も躾けた、実践させた、そうすればこうなった。
麒麟の桃色の舌が軽く蠢く、ちろちろちろ、ヘビの舌のような動きだがヘビの舌にしては短い、やはりこれは麒麟の舌だ、俺を気持ち良くさせてくれる麒麟の舌だ、あの短い舌を俺の舌でなぶるのが楽しい。
小さな鼻をヒクヒクさせて汗を流しながら応える様は見ていて実に心が揺さぶられる、目を閉じて涙を流しながら苦しそうに応えるのだがその時には必ず命令する、俺を見ろと、俺を見ながら行為に励めと。
蕩けるような瞳が俺の顔を一心に見詰めて来る姿は俺の心を確かに潤してくれる、こいつが俺に夢中なのだと自覚すると同時に胸の奥がキュンキュンと震える、ついつい衝動に任せて行為を中断して意味も無く麒麟に抱き付く。
きっとハートマークが乱舞しているだろうと自覚しながらも止められない、麒麟は小動物のように震えながら狼狽えるのだがそれをまた観賞するのが楽しい、しかし俺に告白してからは麒麟の様子が少しおかしい、積極的?
まるで自分のモノだと言わんばかりに俺の体に唇で愛の証を刻む、明日はグロリアに再会するのだから駄目だと何度も注意をしたのに無視するように、いや、実際に主の言葉を無視して没頭しているのだ、や、やめてよね、か、隠せる所だけだぞ。
それを誤魔化すように舌が蠢き指が動く、あんあんあん、俺の喘ぎ声ってどうなんだろ、気持ち悪くないのかな?変な事を考えちゃうぜ、そしてそんな俺の隙を見計らってキスマークをっ、小さな舌は二枚貝のようなキスマークを刻む、赤い赤い二枚貝。
俺の小さな胸に刻まれたソレを見てついついジト目になってしまうが幼い聖獣は主の視線などお構いなしに行為に励む………藁のベッドに粘液が広がってまるで蛞蝓が這ったかのように卑しい光を放っている、あ、下半身の所がひどい、は、恥ずかしい。
ぴちゃぴちゃ、水滴が落ちるかのように一定のリズムを刻む、麒麟の頭を手で押さえ付けるようにして少し拒否をする、あまりにも行為が長い、もう何度もこれで終わりで良いだろうと思ったのに終わる気配が無い、女同士だと締めが難しいのはわかるけど。
それでも異様だ、誘い込んだのは俺だけど、うーうーうーうーうー、俺が口元を押さえながら麒麟を睨む、そこには確かな怒りがあるのに無視するように麒麟の体が俺に重ねられる、這い回る、気持ちいい、気持ちいいのぉ、幼い肉は柔らかくて極上の感触。
しかし手足は短いので行為をする際にはやや忙しない、あんあん、俺の涎を舐めながら麒麟が薄く薄く微笑む、親が子を見守るような底無しの愛情を秘めた表情、何処までも何処までも俺に尽くしてくれる、あう、も、もういいんだぜ、ご主人様疲れちゃった。
「も、もうやらぁああああああああああ、いいってぇ、いいからぁああ」
「お可愛い、我のご主人様」
「ひ、ひぃ」
「我の、我だけの」
異様な麒麟の姿に恐怖を覚える。
行為は何処までも続く、何処までも何処までも朝を迎えるまで。
呼吸もままならず藁の上で寝転ぶ俺に朝焼けの光が差し込む、おめめ痛い。
あそこも痛い、むずむず、もうやだぁ。
きもちいの、やだ。
「首に――――失礼します」
くびはだめだって、あれ、いいんだっけ。
グロリアに、気付かれるから。
だめ。
「だからするんですよ」
だ、め。
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