第317話・『ふぃんふぃんは無いですよ、股間に無いですよ』

恋仲になろうとするとは可愛い奴め、ドキドキ、誰かに相談したいような相談したくないような判断し難い自分の感情。


キョウ辺りになら話しても良いだろう、つーかどっちみち俺の中で見ているんだろうしな、だけど何だか怒られそうな気がする。


叱られるのではなく怒られる、叱ると怒るでは全く意味合いが違う、怒るのは自分の感情を優先するからだ、どうしよう?うーん、やめとく。


あいつが自分から言うのなら答えるけど、麒麟が自分で選んだ道なのだ、俺はグロリアの所有物だけどだからって麒麟の感情を拒絶する事はしない。


永遠に俺と一緒にいるのだ、麒麟は永遠に俺と一緒に未来を歩いて行くのだ、だからその感情によって何が引き起こされようが笑って受け入れよう、それが本体である俺の役割だろう?


それに恋い焦がれている優越感は中々に気持ちいい、それが見た目麗しい我が一部なら尚更の事だぜ……愛されたり崇拝されたりはしてるけど恋い焦がれられるのはなぁ、俺ってモテモテじゃね?


可愛いから仕方ない。


「くふふふ」


「?ご主人様、どうなさいましたか?奇妙な笑い方をして」


「麒麟、抱っこー」


「し、していますが?」


「あ、そーだったぁ、くふふふ、俺ってバカだなぁ、麒麟が俺の事を大好きで嬉しくて、抱っこされてるの忘れた」


「そ、そうですか、それはようございました」


「んふふ、何がいいのー?麒麟が俺の事を大好きで恋い焦がれている事ー?」


「じ、自分ではそれが善悪のどちらに属するのが判断出来ません」


「そ、じゃ、保留」


「はっ」


生真面目過ぎる麒麟、そして不真面目すぎる俺……バランスとしては中々に良いと思う、麒麟の足取りは軽い、圧倒的な能力に隠れがちだが身体能力も一部の中ではトップレベルなんだよなァ。


逆に身体能力や特殊能力で全く使えないのが祟木、しかし頭脳やカリスマ性や社会的地位はトップレベル、俺の一部はそれぞれに特化していて俺を支えてくれる、何にも無い俺に彩りを与えてくれるんだ。


い、言わないけど感謝はしているぜ?袈裟と、篠懸(すずかけ)と呼ばれる麻の法衣を身に纏った麒麟に体を預けながらこれからの事を夢想する、望めば大体の事はしてやろう、ふふっ、俺に出来る事なら。


しかし頬っぺたにキスは驚いた、あれってセックスよりもドキドキするのなー、不思議、どうしてだろ?ドキドキ、セックスの時はあんなにドキドキしない、気持ち良いけどドキドキしない、不思議だ。


キョウに今度聞いて見よう、キョウは俺と違って何でも知っているから何でも聞ける、木々の枝が風に揺られて恐怖を演出する、だけど麒麟の腕の中にいると全く怖くない、こいつはどんな事があっても俺を護る。


「麒麟って、変な所で男らしいよな、ちんちんついて無いだろうなー」


手を伸ばして股間を叩くと内股になる麒麟、何度も見たけど変な術で隠して無いだろうなァ、麒麟は顔を赤面させながら汗をダラダラと流す、俺にされるがままの姿が可愛いゾ。


「な、無いです」


「何がァ?」


「ひう」


「ナニがァ?」


「お、お許しください」


「?別に怒って無いのに変なのー、ぺちぺち、ちんちん無いじゃん、ロリじゃん」


「ひうううう」


「……おっ!そろそろ頂上だぜ♪」


「は、はい」


「ぺちぺち、わはは、やっぱり何もなーい」


「ご、ご主人様っ」


涙目になって睨んで来ると思ったら赤面しながら涙目で見詰めて来る。


ふふ、睨んでも良いのに。


両目を抉っても良いのに。

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