第302話・『優しさの理由を探さないと生きれない人』

グロリアに完敗した、模擬戦、何時になったら彼女に勝てるのだろうか?彼氏として恥ずかしい。


勝てるビジョンが浮かばないんだよなァ、ありゃ化け物だわ、クロリアや炎水の実力を知っている俺から見ても規格外だ。


しかし凄いな、どれだけの修行をしてどれだけの死線を潜ればあれ程の実力が得られるのだろうか、流石に手も足も出ない状況で完敗したのは悔しかったので口汚い言葉で罵った。


そしたら無言で小一時間ぐらいケツを叩かれた、あんあん言えるような愛撫に近いソレでは無くマジで叩く感じの!ケツを擦りながら舌打ちをする、グロリアはまだ天幕で熟睡中。


街道から外れた小さな林に天幕を張って一日を過ごした、夜中に何だか盗賊でも無いようなチンピラ風情が襲来したような気がするが気のせいだったか?自己防衛機能で勝手に一部を具現化したのか?


寝ているグロリアを擦りながら問い掛けたが何も答えてくれない、んーー、熟睡中のエルフライダーは危険って事で納得しよう……周囲を見回すと僅かに血の臭いがする、美味しそう、朝食はパンか人だな。


ん?何もおかしくないよな?パンか人、どっちも朝食に向いている、違和感なんて無いはずなのにおかしいぜ、赤い空、朝焼け、何処までの広がる空が恥ずかしそうに赤面している、まだ一日の始まりだぜ?


「ボロ負けして赤面していた俺もあんな感じかな?」


『ナー、あのシスターは化け物ナー……キクタ以上の化け物がこの世に存在するだなんて驚きだナー』


「ふふ、俺の彼女はスゲェだろ?」


『キョウが惚れる女はキクタと良いあのシスターと良い、人類の外れモノばかりだナー』


「俺も外れモノだし相性が良いのかもな!昨日さ、チンピラに襲われたような気がしたけど誰が対処した?」


『妖精だナー、色んな場所をキクタと旅をしたけどあんなに凶暴な妖精は初めてだナー』


「ユルラゥか、あいつは妖精つーかほぼ害虫だからな」


『成程、害虫ナー』


「本人の前では言うなよ、傷付くからな」


『努力して見るナー、朝食がキョウの担当ナー』


「早起きした方が適当に作る感じだぜ、昨日は深酒していたし軽いモノで良いだろ、ふぁー」


東の空がゆっくりと紅黄色に染まる様子を伸びをしながら見詰める、人間と違う存在なのにアレを赤色として捉えられる自分に密かに感動する、俺は俺だ、エルフライダーだけど人間でもある。


地平線の方向に存在する大気中の細塵によって太陽の短い波長の青い光が散乱される事で主として赤色光だけを認識する、人間としての特性、エルフライダーも同じようにあの空を赤と感じられる。


「人間だよな、俺、ひひ」


『どうだろうナー、見落としている事があるんじゃ無いかナー』


「見落としている?」


『普通の人間なら気付くナー、でもキョウからしたら普通の光景かもナー』


「な、何だよオイ、はっきりしない奴だな!ぷんぷん!」


死屍累累(ししるいるい)、枝や木の根に腸が絡み付いている様子も油と血によって青々とした植物が赤く染まっているのも何もかも普通の光景だ、朝の日差しで世界か華やいで見える。


花と蜂が戯れている、死体が累々と積み重なっている様は中々に素晴らしい、首を鳴らしながら溜息を吐き出す、何時もと同じだよな、世界は常に生と死が同居している、何時もの光景、何も変わら無い。


「少し、花が多いかな」


『それがキョウの感じる違和感ナー……それだけしか、感じれないのナー?」


「…………他にあるか?」


『何も無いナー、キョウが正しい』


「何だか含みのある言い方だな、あっ、そうだ!少しだけおかしい所を見付けたぜ」


『言って』


「呵々蚊が朝から俺に優しいの、ふふ、おかしい」


『そ、それは変じゃないナー』


そんだけかな、ふふん。

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