第296話・『下着の確認をする女の子を見る変態を見る敵』

高い位置から魔力で硬度を高めた糸を連射する、決定打に欠けるがそれはこちらも同じ事、俺は一部の能力を封じられているし呵々蚊には遠距離攻撃が無い。


互いに決定打に欠ける事は確かなのだが攻撃をする側と避ける側では精神的なストレスに大きな違いがある、腕を組んだまま悠然と微笑むキクタモドキ、呵々蚊に対しては殺そうとする糸の動き、俺に対しては捕らえようとする糸の動き。


頬に血が走る、痛みで微かに瞼を閉じた隙に一斉に糸が襲い掛かって来る、舌打ちをする、ファルシオンが脈動して独りでに動き回る、腕が攣るような感覚、勝手に動いている?俺を護る為に?紫色の粒子によって敵の糸は全て消え去る。


魔剣の能力だけを無効化する謎の現象、自分自身のミスに何だか呆然となる、それ以上に俺を庇ってくれたファルシオンに何とも言えない感情を覚える、グロリアが初めて俺にくれたプレゼント、グロリアが与えてくれた俺の牙。


好き。


「その魔剣、仲間にしようと思ったけど無理ね、能力の相性が最悪だわ、魔剣の魔物を増やすアタシと魔剣そのものの活動を停止させてしまう魔剣、仲良く出来そうに無いわね」


腕を組んだまま何処か残念そうに呟くキクタモドキ、高い位置から見下されると何だか苛立ってしまうぜェ、それ以上に無い胸を偉そうに見せつけるんじゃないぜ?そのポーズは胸がある奴のポーズだろうが。


説教したいがそれ所では無い、攻撃は続いている、能力は使えなくてもこの体には魔王軍の元幹部の細胞と聖獣である麒麟の細胞が含まれている、圧倒的な身体能力に圧倒的なスタミナ、それが俺をほぼ無傷でいさせてくれる。


呵々蚊はどうだろうか???俺よりも執拗に攻撃されているのに息切れすらしていない、あれだけ脳味噌を丹念に弄ってやったんだ、体に何かしらの影響が出てもおかしく無いのに無駄の無い動きで攻撃を躱している、恐ろしい早業。


切断した糸と糸を結ぶ事で相手の動作を遅らせている、その数が増えれば増える程に手数は減る、そうやって糸を何度も何度も結ぶ事で巨大な球体を作っている、糸を意思の力で動かせるとはいえあそこまで複雑に絡めば解く事は不可能。


単に切断された糸なら自分の体に戻す事が出来るがこれだとあまりにも重量があり過ぎて自分から足を運ぶ他に無い、その重みで蜘蛛の巣の位置も下がって来ているなあ、相手の動作を遅らせると同時に攻撃が届く位置まで誘導している、すげぇ。


「凄いな、手癖が悪いつーか、いや、褒めてるぜ?」


「昔からキクタとキョウの下着を盗んでいたからナー」


「え、冗談だろ?キクタが怯えていたけど冗談だと思ってたぜ」


「あはは」


「……笑うだけで具体的な内容を話さない、マジか」


「あははははははははは」


「………………え、俺とキクタの下着を何に使ってたんだ」


「ナー」


「…………語尾だけで何でも解決すると思うなよ」


まあ可愛いから良いか、美少女に下着を盗まれるなら役得って奴だ、俺の中のキクタが拒絶するように暴れているが無視をしよう、すまんキクタ、お前の下着と俺の下着は犠牲になったんだ、一緒に供養しようぜ。


「今はキョウが遊んでくれるからもういらないナー」


「ああ、遊ぶって、夜のな」


「夜遊びは激しい程に楽しいナー、そしてそれ以上に過去のトラウマを払拭するのは最高に楽しいナー」


ナイフが回る、月の光を帯びた刀身が怪しく濡れる、糸は切断され糸玉は大きくなる、粘着があるので絡ませるのは容易だ、呵々蚊の動きに無駄は無い、そして蜘蛛の巣の高度が一気に下がる、一気に限界が来たか?


「あら、見下すのが好きなのだけどそれももう出来無いわね」


キクタモドキは地面に着地しながらクスクスと笑う、あどけない表情、俺やキクタの下着を盗んで楽しんでいた癖にゆるゆるの表情をしている呵々蚊とは正反対の表情だぜ、あれだ、どっちが味方だったっけ?


何だか不安になってパンツの確認をする、グロリアとお揃いの!――――あるぜ。


「ふう」


「ナー」


「一人は下着を見て、もう一人はその下着を見ている光景を凝視している……何かしらコレ」


「確認作業だぜ!」


「目の保養だナー」


「そ、そう」


さて、次がお前の番だぜ?何色の下着を履いているのか教えてくれ♪

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