第293話・『ぱいぱい怖い、ぱいぱい倍倍』

蜘蛛の糸、魔力を帯びたソレは容易に地面を切断する、勢い任せに飛び込んだ呵々蚊は空中でソレを器用に避ける。


前に戦った時も感じたが身体能力が段違いだ、どのような体勢からでも攻撃を避けて鮮やかに着地する、地面を蹴飛ばし距離を詰める。


手に持った洒落っ気の無いナイフがクルクルと回る、瞬間に切断される敵の糸、糸の数は多い、それ以上に呵々蚊の手数が多い、糸は勢いを失って宙で舞う。


呵々蚊の職業って何だっけ?勇者の仲間、しかしそれが何なのかわからない、わかるのは強いって事だけ、魔力を使わずに手数で圧倒する………洗脳スキルもあるらしい、だから職業何だよ?


俺は地面に座りながら安全圏で呵々蚊を見守る………躍動する小さな体、圧倒的な手数、ここから見てもわかる、あの糸は鉄すらも容易に切断するであろう、そしてそれを成す為の速度と硬度もある。


「殺せるか?」


「―――――――――――」


俺の声でその体がさらに躍動する、俊敏さが段違いに跳ね上がり残像を生み出す、キクタモドキは余裕は無いが楽しそうだ、殺し合いを楽しむロリ二人を保護者として優しく見守る。


しかし敵の位置が高すぎる、蜘蛛の巣の中心で腕を組んでいるキクタモドキ、流石にあそこまで跳ね上がるのは無理だろう、遠距離攻撃があるのなら呵々蚊は既にしているはず、ふふ、近距離専門かしら♪


いいじゃんいいじゃん、それをどうやって克服するのか見たいぜ、俺の声を聞いてどんどん狂え、勝った方を愛しちゃる、うふふふ、だから呵々蚊、キクタから俺を奪い去ろうね、かつての自分を殺す為に。


俺を見殺しにした呵々蚊とキクタをここでお前が殺すんだ、殺せー殺せー、俺を見殺しにした呵々蚊もキクタも殺せ、もう見殺しに出来無いように殺せ、ふふ、疼いて来ちゃった、立ち上がる、伸びをする。


「俺も混ざろう♪」


「キョウ!」


「にゃんにゃん」


「?どうしたナー?」


「呵々蚊の戦う姿がにゃんにゃん見たいで可愛いから俺も真似をする、そして殺す、肉片にする」


ファルシオンを抜く、糸が寄って来るが全て紫の粒子に飲まれて消えてしまう、俺のファルシオンを魔物にして使役しようだなんて何て奴だ、ファルシオンは俺のモノだ、俺の愛剣だ。


俺から大切なモノを奪う奴はみんな消してやる。


「協力してキクタモドキを殺すぞ………食えるかどうか試したい」


「へえ、キョウ、一緒に戦ってくれるのナー」


「え、い、嫌か?」


含みを持たせた言葉に少し狼狽える、こいつは俺一色に染めてやった、まともな思考回路は失っているのに生意気だぜ、しかし瞳孔は開きっぱなしだし息も荒い。


それが戦闘によるものでは無いのがわかる………俺が近くに来たから興奮しているのだ、童貞かっ、思春期かっ、俺を性的に見詰める呵々蚊の視線に少し背筋が震える。


戦闘中で無かったらこの場で押し倒されそうだな、くすくすくす、モテる女は辛いぜ、こーゆー所はグロリアに似てるかもな、真面目ぶっているのに俺との快楽に弱い所。


グロリアは酷かったからな、覚えたての頃は天国であり地獄だった、思い出すだけでおっぱい痛い、あそこも痛い、頭痛がしてくる、あのアマぁ、いやいや、大好きだけど体は正直だ。


睡眠って大事だぜ?


「おっぱいは感じる、でも感じるって事は神経がある、痛覚がある」


「キョウ、遠い目をして何を言ってるナー」


「おっぱい痛い」


「…………大丈夫ナー、キョウのおっぱいはそんなに無いから、あ、な、無くても可愛いけどナー」


「……小さい胸でも痛い、小さい胸だからこそ痛い」


「キョウ……可哀想ナー、おっぱいも小さいし、痛いし」


「ふざけんなっ!お前だっておっぱい無いじゃん!」


「な、ナー」


「おーい、アタシの事を忘れて無い?」


キクタモドキ五月蠅いよ!お前だっておっぱい無い癖にっ!


無い癖にっ!――――――育つ余地はありそうだから、殺すか。

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