第291話・『親友殺しを始めるけど嬉しいので親友なのかわからん』
可愛い。
可愛い、可愛い、綺麗、可愛い、綺麗綺麗、可愛い、か、かわいい、きれい、可愛い、可愛い、綺麗、可愛い、綺麗綺麗、可愛い、か、かわいい、きれい。
キョウの横顔を見ながら溜息を吐き出す、あ、圧倒的な美少女、世界から浮いている、浮世離れ、いや、もうこれは理不尽だろう、全ての人類が彼女の前では等しくゴミ。
ばちばちばち、火花が弾ける、火花では無い、美しい花火だ、ああ、それがキョウを彩る、彩ったのにその美貌に負けて色褪せる、キョウ、キョウ、とっても素敵だキョウ。
殺せと命令された、キョウに頼み事をされた事はある、それはとてもとても弱々しい声で優しい口調で告げられた、しかしキクタを殺せと口にしたキョウは威圧的で高圧的で支配者の表情をしていた。
呵々蚊にはそれが何よりも嬉しかった、相手を支配して威圧する、それは生きる事だ、キョウはもう死を望んではいない、生を望んでいる、大好きな人が生きようとしている手助けが出来る、それは幸福だ。
全身に刺し込まれた透明な触手の影響で精神が不安定になる、しかしキョウが望めばそれが正解なのだ、そ、そうなのだ、呵々蚊を蹂躙して望む呵々蚊に進化させてくれる、過去の自分を忘れる事が出来る、変える事が出来る。
愛する人に利用されるのは嬉しい、そして恋敵の模造品を殺せと囁いてくれる、本物のキクタが知ったら傷付くだろうから二人だけの内緒だよと囁いてくてる、あああああああ、二人であのキクタを殺せるのか!嬉しい!
何時も何時もキョウの一番はキクタかレイ、三番目が呵々蚊、それに何処かで満足していた、それに満足をするように努めていた、自分をコントロールするのは上手になった、本音を隠すのが得意になった、嘘が得意になった。
だけどキョウの能力によって既に本音しか語れない身だ、そしてその本音を増長させる能力、の、能力によって隠していた本音が爆発する、キクタからキョウを奪いたい、大好きなキクタから愛するキョウを奪いたい。
それは二人の親友である呵々蚊が最も望んではいけない事、しかし今、キョウがそれを望んでキョウが呵々蚊を改造してくれている、本音を言えるように、本音で振る舞えるように、喜びで全身が震える。
「良い塩梅だぜ」
鈴の音のようなキョウの声、男の子口調が可愛いよぉおおおおおおおお、ああああああああああああああ、かわいいキョウが呵々蚊をかわいく改造してくれている、嬉しい、可愛く無い呵々蚊をキョウが改造してェ。
望む様に望む様に改造して、ちゃんとキクタを殺せるように、こ、ころす、しんゆうをころそう、あいするひとのためにころそう、そ、そうだ、それがいちばんだ、だって、だってだってだって、チカチカ、点滅している?
キクタが呵々蚊を誘ったせいで呵々蚊はキョウに想いを告げられなかった、見殺しにした、お前のソレが無ければっ、キクタを失って傷心したキョウを呵々蚊のモノに出来たかもしれないのにぃいいいいいいいいいいいいいいい。
嫉妬と自己嫌悪と憎悪が胸中で膨れ上がる、それがキョウに与えられている事実に感謝する。
「ちゃ、ちゃんと、キョウが望むような呵々蚊になっているナー?な、なってる?」
「さあ」
「ぁぁ、こ、答えて欲しい、答えて欲しいナー、お、お願いだから」
「どうして?」
「き、キョウの望む呵々蚊じゃないと意味が無いからナー、あ、あの路地裏を無情にも去った呵々蚊はもういらない、もういらない、あんな奴、あんな呵々蚊っっ」
「そんな呵々蚊は必要無い?」
「いらない、いらないいらないいらない、き、キクタと一緒にキョウを捨てた呵々蚊なんていらないっ、あああああ、いらない、消えろ、きえろ、きえてェ」
「そうかそうか、やはり良い塩梅だ」
「け、けして、きょう」
「消すよ、そしてほら、そこにいるぜ、キクタ――――モドキだけどさ、俺への愛情を見せてみろ」
「は、い、キョウ」
手を繋がれて、光が弾けて、蜘蛛の巣の中心で笑う少女、キクタと同じ、同じ少女。
あ、こいつだ、キョウの元から呵々蚊を連れ去った女。
悪魔。
「あ、そうだったナー」
だから殺さないと駄目だった。
あの日に本当は。
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