第284話・『モテモテキョウだよ!モテモテモチモチ新食感』
創造された空間の中にまた創造された空間、建物に足を踏み入れるとまた青空が広がる、今回のソレは雄大であり壮大、何処までも青空が広がっている。
何度移動させられるんだ?緩やかな流れの川、海盆の隆起と数え切れないほどの年較差がもたらす浸食作用で形成された柱群が威圧するように聳え立っている、そしてそこには透明な糸で構成された蜘蛛の巣のようなものが張り巡らされている。
石灰岩、泥灰土、ドロマイト、粘板岩、灰色狐の視覚と妖精の感覚で構成している物質を割り出す、妖精の感知能力は使えなくても肉体に記憶された感覚はある、しかし見事な柱群だがあの蜘蛛の巣は何だろう?巨大過ぎる、何を捕まえる?
類型の岩々から推測するに海洋環境で形成されたものだろう………水平方向の層状構造、そして垂直方向の変化は深海に存在していた事を裏付ける粘板岩と同時に海進や海退の様子を見せている、ここは現実の世界なのだろうか?
時間の流れによって構成される物体すら創造出来る存在なのだろうか?呵々蚊はそんな俺を心配そうに見詰めている、俺の事が心配であってこの圧倒的で雄大な光景に怯えている素振りは見せていない、お、俺もびびってねーし。
「キクタの魔剣『スモグリ』の巣ナー、あらゆる物質に命を与えて生命として使役する特殊な魔剣ナー」
「ま、魔剣に巣って意味がわかんねーぜ」
「あの魔剣は魔物を食らうナー、でもここまでの規模では無かったはずナー、キクタの魔力の残滓がこの結果を生んだかナー」
「そのスモグリって魔剣は何処にいるんだ?そいつも魔物になってるのか?」
「魔物ならまだマシだけどナー、呵々蚊の予想だとそれより厄介ナー」
この雄大で広大な石柱群を構成した浸食作用は結氷砕石作用と呼ばれる特殊なモノだ、特殊な気候によって夏と冬の100度にもなる温度差の開きでこのような歪な変化を遂げる、凍結と解凍の作用によって水は表面から細長い溝を穿つ。
それによって少しずつ岩の最も硬い部分を削ぎ落とすように引き剥がしてこのような特殊な石柱群を形成するのである、祟木やササの知識を読み取りながら頷く、説明してやろうと口を開くと呵々蚊が全く同じ内容を口にする。
こ、こいつ、頭も良いのかよ、最初の変態チックだった頃を除けば見た目は美少女だし頭も良いし!お店をあれだけ賑わしていたって事は商いにも通じているし完璧じゃねーか、しかも現時点では俺よりちょい強い気がする、流石は勇者の仲間っ。
「あ、頭良いのな」
「そうかナー、一般常識ナー」
「………俺は農民として生きて来たし、食べられる雑草の見分け方とか知ってるしー」
「拗ね方が斬新すぎるナー、こっち、キクタの気配がするナー」
「ん??キクタの魔剣が黒幕なんだよな」
「そうだナー、まあ……少々おかしな方向に進化しているようだけどナー、キョウは蜘蛛が好きナー?」
「良く知ってるな、昔から好きだぜ?理由はわからないけど」
「ふふ、キョウは昔から奇妙なモノに惹かれる傾向があるナー、呵々蚊が悪戯で蜘蛛をプレゼントした時からナー」
「へ?」
「キクタと仲良くしているのが羨ましくてナー、悲鳴でも上げて逃げるかと思ったら『わあ、ありがとぉ』だってナー、それから大事に育てていたナー」
「な、何の話だ?」
「キクタはそれを覚えていたんだナー、そして蜘蛛の化け物に変化とは、勇者の力も何でもありナー」
「キクタが俺の好きな蜘蛛の為に何かしたのか?回線は繋がって無いけど俺の中にいるぜ、本体はまだ繭の中だけどさ、精神は―――」
「そうじゃないナー、キクタじゃなくてキクタの魔剣ナー」
「ふーん、取り敢えずぶっ殺そうぜ、あ、ぶっ壊そうぜ」
「キョウのそーゆー所、良い具合にネジが外れていて好きナー」
柱群を跳ねるようにして移動する、川の幅は割とあったがジャンプすれば何とか渡れた、呵々蚊はそれに当然のように続く、無理だナーとか泣けばお姫様抱っこをしてやる予定だったのに。
「この上から気配がするナー、キョウを惑わすエルフの気配もするだろナー」
「確かにエルフの気配だけど……一つだけだぞ?魔剣の魔物の親玉は?」
「それも一緒ナー、キクタめ、呵々蚊がキョウに悪戯で蜘蛛をプレゼントしたと知った時はボコボコに殴りやがったのに、わかりやすい女ナー」
「なんだよ?」
「キョウはモテモテって話だナー」
「なにそれ、詳しく」
凄く聞きたいっ!
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