第278話・『見捨てた癖に優しくしてくれて死ねありがとう』
「えっちぃ事ばっかして外に出なかったから太陽が怒ってるぜ、肌に痛い、日差しが痛い」
「あ、あまり外でその事を言うのは止めるナー」
「えっちぃ事?」
「う、うん」
「わかったぜ!話したらダメな理由がわかんねぇけどわかったぜ!」
「は、恥ずかしいからナー」
「理由もわかったぜ!」
意外に恥じらいのある呵々蚊の反応についつい笑ってしまう、微笑ましいと感じてしまう、古都の中心を目指しながら歩くのだが呵々蚊の隠れ家が思った以上に居心地が良かったので帰りたくなる。
いやいやいや、取り敢えず俺が食いたくないって無意識に思っているエルフを捕獲しないと駄目なんだよな?確かに匂いはわかっていたのに無視するように振る舞っていた俺は変だ、俺がおかしい。
一部の干渉もキョウもキョロも封じてまで逃がそうとしているのだからよっぽど何だろう………しかし俺自身はそれを聞かされても別に逃がそうって気持ちにはならない、捕獲して本来の自分を取り戻したい。
お母さんはそれがわかっていてけしかけたのか、食え喰え食え喰え食え喰え食え食喰え食え喰え食え喰え食え喰え食え喰え食え、エルフに例外は無い、あの集落は、だって、食べないと、苦しませて食べないと、満たされない。
「エルフは美味しいんだもん、それに他のご飯じゃお腹膨れない」
「ふ、服を下すナー、おへそが見えるナー」
「見せている、ほれほれ」
「ナー、ううう、離れて!」
「むっ、生意気だぜ、ふふん、俺の事が大好きな癖に、いいよ、もうおへそ見せてあげなーい」
「あ」
惜しむような声を聞きながらほくそ笑む、あんなに変態だったのに数日躾けただけでコレだ、疼く、物陰に引きずり込んで全てを感じたい、だけど今は件のエルフが先だ、それにここまで恥じらうのだから外でしようとしたら必死で抵抗するかも。
それを屈服させるのが面白そうだが今はそれ所では無いしな、砂岩とラテライトで築かれた街を歩きながら欠伸を噛み殺す、キクタなら女の子なんだからと注意するが呵々蚊は何も言わないんだよなぁ、あまり俺に干渉しないって感じで気楽だ。
ストーカーの時は別の意味で干渉しまくりだったけど一度抱いてやれば良かったんだな、今度からはめんどくさそうな奴は積極的に抱いていこう、うんうん、それが良いな、それが良いぜ、そうしたらみんな俺の事が好きになるよな?優しくなるよな?
人に冷たくされるのは嫌いだ、優しくされるのは好きだ、呵々蚊の話だと魔剣の魔物の気配は僅かで例の楼閣に集中しているらしい、チラチラと俺の方を見ながら手櫛で髪を整える呵々蚊、いちいち所作が可愛い、寝床を供にすればこうなるか。
祠堂が幾つもあるが相変わらず何を祭っているのかわからない。
「何を祭ってんだろう、知ってる?」
「んナー!?」
「そんなに髪を弄っても良い事無いぜ、肌を重ねればどっちみち乱れるし」
「べ、べべべべ、別にそんな事を言っては無いナー」
「そうやって毎日綺麗にお手入れしときな、夜にグチャグチャにするのが楽しいから」
「ぅぅぅ」
「ばーか♪」
手を繋いでやるか、手を伸ばすと怯えた顔をして素早く手を隠す、それを奪い去るようにして無理矢理に掴む、少しひんやりとしたソレ、こいつ体温は低めだよな、ガキの癖して意外性があって面白い。
手の震えがこいつの気持ちだ、俺の事が大好きな癖に何処か俺に怯えるような表情を見せる、それが気に食わない、そこもキクタと同じだ、どうしてこいつ等は俺に『申し訳無い』と、そんな表情をしやがる。
「小さい掌、こんなに小さいんだから隠そうとする必要も無いだろ?」
「き、キョウは呵々蚊に触るのが嫌じゃないナー?」
長い睫毛が揺れる、そこにどのような感情があるのかわからない。
何に怯えているのだろうか?俺の事を助けてくれた癖に、優しくしてくれた癖に、快楽に喘いでくれた癖に。
見捨てた癖に――――ざーーーざーーーーーーーーざーーーーーーーーー。
「お、れを、もう、すてないなら、ゆる、してあげる」
「キョウ?」
視界が涙で歪む、ああ、お前も泣いているのか?
どうして涙が出るんだろう、こんなに好きな人と一緒に居るのに。
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