第276話・『内緒の浮気、ナイショノヨロコビ』
行為に誘っておいて主導権は相手に与える、キョウのやり口は以前と変わら無い、しかしその美しい裸体に夢中になる。
性を啜られる、生を啜られる、正を失い聖を犯す、魔性の肉体、眩い魂、無垢な精神、快楽に歪んだ表情、夜の闇でもそれは消せない。
結局は行為に夢中になるのは自分でソレを冷静に見詰めているのがキョウ、薄く微笑んだ表情には余裕がある、だからこそもっと歪めたい、もっと自分の色に染めたい。
自分の匂いしか染み込んでいなかったベッドにこの二日間の間にキョウの体臭が染みついている、甘ったるい匂い、性欲を刺激する淫靡な匂い、鼻孔をくすぐり脳味噌をくすぐる。
自分が夢中になれば夢中になる程にキョウは嬉しそうに笑う、行為そのものは大人のソレなのに表情や所作は子供のままだ、それが生意気で愛しくてもっと自分に夢中になって欲しい。
「キクタより?」
耳元で呟かれた言葉に脳内が沸騰する、キクタより自分に夢中になって欲しいっ、それは幼い頃のトラウマを払拭する為の魔法の言葉だ、キクタとレイが喧嘩している時にこのお姫様を内緒で連れ出した。
彼女は良く笑った、それは自分だけの笑顔だった、花咲く笑顔、それがキクタだけのものと理解したのはすぐだった、だから親友として振る舞った、キョウが幸せなら何だって良いんだ、自分を殺せ、殺して見せろ。
自己を犠牲にしてでもキョウの幸せを願ったのにキクタが一人の老人に誘われて外の世界に出ようと言った、キクタは勇者だと、特別な少女だと何処かで思っていたがまさか勇者だとはっ、一人で行くのか?ああ、自分も?
だけどそれはキョウを置いていく事になる、お前がいたから路地裏の野犬のような連中はキョウに手を出さないんだぞ?わかっているのか?ああああ、わかっていなかったのは自分もキクタも同じで同罪だ、あの貴族はちゃんと殺せたよな。
復讐を終えてもキョウは戻らない、戻す為にお前は狂った、何を研究していたのか何処に消えたのかお前は何に成り果てたのかそれすらもわからない、しかしキョウの魂は再生する、肉体も必ず再生する、記憶は無くなる、エルフライダーの宿命。
そうだ、キョウの一番であったキクタはキョウの一部になる事と忘れられることを繰り返してキョウの一部としての純度を高めた、エルフライダーの能力すら保持するあいつはその力でキョウを幸せにしようとしている、かつての自分の罪を清算する為に。
その隙を狙ってキョウの一部になった、キョウはキクタにでは無く自分に頼んだのだっ、殺して欲しいと、全ての輪廻から解き放つ為の死を頂戴と!その為の方法も見付けた、それなのにどうして自分はこのように肌を重ねて唾液を交換して―――――して。
愛を囁いている?そんな権利は無いはずなのに。
「じょうずだねェ、んふふ」
「キョウ、キョウ、キョウ、見て、見てェ」
「見てるよ、どうしてそんなに不安そうな顔をしてるの?」
「キクタを忘れてっ」
「キクタを、どうして、どうしてそんな酷い事を言えるの?」
「キクタを忘れて、キクタを見ないでっ、キクタばっかり、お、同じなのに、同じように救えなかったのにどうしてあいつだけ」
「くふふ」
「忘れてっ」
「いいよぉ、今だけはお前のキョウでいてあげる、お前が一番大好きなキョウ、お前を一番愛しているキョウ、呵々蚊だけのキョウ」
じっと見詰められる、行為によって部屋には何とも言えない匂いが充満している、幼い自分と若いキョウの肉体が絡み合った所で性の匂いは何も変わら無い。
指を絡めると小さな自分の掌は全てキョウに捕食されるような形になる、ぞくぞくぞく、背筋に甘美な何かが走る、もう一度言って欲しい、もう一度じゃない、何度でも言って欲しい。
行為によって肉体は喜び好意によって精神は潤う、想いは何処までも昂る、際限無く昂る、身長差があるので中々に気持ち良い場所が『重なら無い』が楽しみ方はそれだけでは無い。
しかしどうしてもソレをしようとすると自分の頭がキョウの胸の下になる、微かな膨らみ、淡い色のソレ、大人と少女の間でさ迷う裸体、それが面白いように反応する、呵々蚊だけのキョウ。
キクタ、ごめん。
嬉しい。
「お前こそ、俺だけの呵々蚊になれよ、キクタの事は忘れろ、わかるんだぞ」
「わか、った」
「そうか、俺だけの呵々蚊」
「か、呵々蚊だけのキョウ」
気持ち良い、気持ち良い、気持ち良い。
それよりもキョウが泣いていないのが、幸せ。
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