第271話・『幼馴染はずっと心配性、ずっと嫁にはやらん主義』
お母さんは黙って俺を見守っている、人間の真似をしたのを責めるのでは無い、しかしエルフの気配を感じてエルフライダーに肯定的な二人の俺と最大の一部を遠ざけたのは事実。
グロリアに言われて強くなる為にこの古都に来た、エルフライダーの保持する様々な能力も使う事を禁じられた、それは俺がエルフライダーって存在に……深く考えるな、深く考えるな。
エルフがこの古都にいるのはわかっている、あの焚き火、ああああああ、エルフ、エルフ、エルフ、エルフの肉を焼いていた?あははは、おいしそ、ち、違う、違う違う、駄目だ、エルフが食べたい、エルフが欲しい。
「ハァハァハァ」
お母さんが人間の真似は止めろと口にする、でも俺は人間でありエルフライダーでもある、それは事実を認めていないって事になるのかな?急激に押し寄せる不安、集落に暮らしていたエルフ達。
美味しかった、姉妹も長老も一部にしてやった、根底から歪めて俺に奉仕する為の存在に書き換えてやった、いや、あれは最初から俺の一部だ、俺の一部だから好きにして良いんだぜ?でもあの集落はそう。
物凄く発展していたけど、辺境の暮らしって感じで、少し故郷に似ていた、故郷の空気を、なのに美味しかった、美味しかった美味しかった美味しかった美味しかった美味しかった、お母さんは魔物を倒して俺に考える時間をくれた?
ガジュマルの木が雨に打たれて幸せそうに潤っている、防風林として活用出来るし防潮樹としても丈夫で街路樹として楽しむ事も可能で生垣としても利用出来る……あれ、何だっけ、そう、そうだ、ガジュマル、俺は植物が大好きなんだ。
熱帯の樹木の中では耐寒性もあるけど降霜に耐えられる程では無いガジュマル、ふふ、植物好き、しょく、エルフ好き、食する、エルフを食すの好きエルフを食すの好きエルフを食すの好きエルフを食すの好きエルフを食すの好き。
「いたたたっ、脳味噌ぐにゅぐにゅやだぁ」
激しい雨、何処かに隠れないと、それなのに体が勝手に動く、地面を走れ、雨に濡れたエルフを捕食しろ、そうしないと死んじゃう、エルフを食え、エルフがいるって事がわかっているのにどうして食べない?
だってグロリアに、グロリアに言われた事が大切だからそんな事をしている暇が無い、だけどエルフだよ?あのエルフだよ?うううううううううう、雨が肌に突き刺さる、豪雨、熱帯の急激なソレ、ううううううう。
「お、おかあさん」
『は、早く雨宿りするデス』
「いたい、ええうふ、えううふ」
『自覚を促したつもりでしたがお母さんが悪かったデス、そ、それよりも今は早く雨宿りを』
「えるうふ、どこぉ、おれのだよ、それ」
『あぅ、具現化を禁じてッ、赤ちゃんっ』
「おれのえるうう、うぅうう、とられた、ぬすまれた、ゆるさない、おれからえるうを、ゆるさ、ないもん、おれのごはん、おれのだ」
『赤ちゃん!そこの建物の中にっ、風邪を――――――――』
「おれ、えるふ、すき」
何だか単純なソレが救いのように思えてしまう、エルフ好き、綺麗だし可愛いし好き、キクタが好き、キクタは優しいから好き、キクタと同じエルフが好き、あの、あの、ろじうらで、やさしかった。
だからえるふがすき、えるふのきくたがすき、えるふはみんなすき、きくたがおれをすくってくれたからおれもきくたをすくいたいからえるふをしあわせにしたい、そう、えるふすき、むかしからずっと。
『お、お母さんが少し厳しくしたのが悪かったデス、だからっ』
「う、えるふ、きくた、いなくなるからつかまえないと、あのろじうらから」
『赤ちゃん!』
「どうせ、おれをおいて、みんないなくなる、おれだけあそこでしんだ、ふふ」
―――――――――――――――――――――――――――――やだ。
――――――――――――――――――――――――――――――しにたくない。
―――――――――――――――――――――――――――――きくたのばか。
「うぅ、さみしい」
ぽす、前のめりに倒れそうになる、なにか、あたたかいものにおでこが。
なつかしいにおい、だいすきなにおい。
「まったく、雨の日は出歩かないようにと何度も注意したろナー」
「あう」
「雨に濡れたキョウは少し刺激的過ぎるから……どうした、こんな所で一人で泣いて、キクタのバカは?」
「さみしい」
「そうナー、じゃあ、一緒に雨宿りするナー、二人だと寂しく無いナー」
「う、ん」
だれだろ。
やさしくて。
なつかしい。
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