第268話・『何だ、いじめか?いじめなのか?しめじなのか?』

糸を全て切り落とすデス、アドバイスはそれだけだった、糸?詳しく聞こうとしても返事はそれだけ、後は自分で気付けって事だろう。


古都を歩きながら溜息を吐き出す、糸って何だろうか?妖精の感知があればすぐに理解出来るであろうアドバイス、取り敢えず、次は相手を注意深く観察しよう。


奇妙な化け物の欄干に縁取られた参道を通って前庭を進む、寺院?大伽藍と細かく美しい彫刻が特徴的だ、グロリアがいたら幾つか持って帰りそうだな、グロリアグロリアって子供か俺はっ!


奇妙な化け物かと思ったら奇妙な神様を祭っているのか?何かの神の為に建てられた祠堂を横目に先を急ぐ、どうしてか落ち着かない、中央に中庭を配置してソレを囲んで房室を持つ方形のような精舎が多い。


「不思議な街だぜ、何を祭っていたんだろ?」


『この世界の神様は統一されているはずなのにね、貴方の母親?』


「おか、さま」


『でも違うようね、東方のソレだわ』


「異国っぽいよなァ、結界で姿を隠していたんだから……あまり大きな声で言えないような神様か、可哀想」


『可哀想?』


「好きなモノを堂々と公開出来無いって可哀想だろ?」


『ぷぷっ、キョウは可愛いわね、そんな考えも出来るのね』


「キクタ?」


正方形の囲壁の内側に配置された大量の僧房が俺を見ている、それが人工物だとわかっていても奇妙な視線を感じてしまう、体を震わせながら先を急ぐ、昨日、もっとお母さんに甘えても良かった、何だか心細い。


キクタはいてくれるけど横に誰かがいないって寂しいもんだ、十字形の精舎、少し確認しようか?キクタが何も言わないので別に良いだろうと足を進める、基壇に埋め込まれた素焼粘土板の浮彫が目に入る、中々に見事なモノだ。


『売りましょう』と脳内で誰かが呟いたような、グロリアの声、あああ、グロリアだったら売るだろうなと冷静になりながらそれを見る。


「高そう」


『売れば?』


『そうですよキョウさん、売りましょう』


『荷物になるからダメだよォ、んふふ、それよりも小さくて高値で売れそうなものを探せば良いと思うよォ』


「駄目だっ、俺はグロリアに言われてここに修行に来たんだっ!お母さんにもアドバイスを貰った!盗人みたいな真似はしねーぜ」


『悪い意味で真面目』


『悪い意味で愚直』


『マザコン』


「散々だなオイ、お母さんは柔らかくて可愛いんだっ、そのお母さんのアドバイス、無駄にはしないぜ」


『マザコン』


『マザコン』


『近親相姦』


「最後に言ったの誰だ?」


ガタガタと怯えながらも先を急ぐ、ええい、余計な事を言うんじゃねーぜ?しかしこの古都は無駄に広い、魔剣を生み出す魔物がいるであろう中央までまだまだ時間が必要だ、一人は心細いけど自由を楽しめる。


散歩気分は駄目だよなァ。


「ちなみに俺はマザコンでは無いぜ、灰色狐は余裕で叩ける」


『ペット虐待ね』


『母親虐待ですね』


『幼女虐待だよねェ』


「あいつ色々と多くね?」

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